「NOPE/ノープ」”Nope”(2022)

「NOPE/ノープ」(2022)

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作品概要

  • 監督:ジョーダン・ピール
  • 脚本:ジョーダン・ピール
  • 製作:ジョーダン・ピール、イアン・クーパー
  • 音楽:マイケル・エイブルズ
  • 撮影:ホイテ・ヴァン・ホイテマ
  • 編集:ニコラス・モンスール
  • 出演:ダニエル・カルーヤ、キキ・パーマー、スティーヴン・ユァン、ブランドン・ペレア、キース・デイヴィッド 他

「ゲット・アウト」、「アス」と社会批判を交えたホラー映画を生み出してきたジョーダン・ピール監督が、アメリカの田舎町の農場を舞台に、そこに現れるUFOとある兄妹の戦いを描く作品。

主演は「ゲット・アウト」でも組んだダニエル・カルーヤ、そして「ハスラーズ」などのキキ・パーマーが妹役で出演。

また、「ミナリ」など活躍中のスティーヴン・ユァンがショーハウスのオーナーとして登場します。

脚本もピール監督自身が手掛けていますが、注目は撮影にホイテ・ヴァン・ホイテマが来ていることとカメラの使用ですね。

今作はアメリカのハリウッドで映画などの撮影のために馬を馴らす兄妹を主軸に、なんと空飛ぶ円盤の話をやるというのだからこれまた風変わり。

ジョーダン・ピール監督は3作品目になりますが、そのプロットだけ聞くと毎回新鮮な感じがします。

ピール監督といえば黒人であることなど、人種の要素を色濃く反映した作品が続いたのですが、今作も主演は黒人俳優でありまたアジア系俳優もいたり。

やはりジョーダン・ピール監督の新作ともなれば注目作ですが、映画好き以外にはそうでもないのか、初週末に観に行ったもののそんなに人が入っていませんでした。

「NOPE/ノープ」公式サイトはこちら

~あらすじ~

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OJは父と一緒にTVや映画撮影のための馬を飼いならし牧場を経営していた。

あるとき、叫び声の集合体のような音が空で鳴り響くと、何かがたくさん降ってきた。そして空から降ってきたコインが父に直撃し、不運にも命を落としてしまうのだった。

最悪の奇跡といえる事故から、OJは妹のエムの助けを得て牧場を切り盛りするが、父のような力もなく徐々に馬を手放さなくてはならなくなっていた。

そんなある夜のこと、OJが柵の外に逃げ出していた馬を追いかけると、急に家の電気が落ち携帯電話も使えなくなってしまう。

ふと見上げた空にいたのは信じがたい悪夢。

それはあまりに大きく速かった。

OJが見たものを撮影し一儲けしようと、兄妹は監視カメラ機材をそろえてそれをとらえようとするのだった。

感想/レビュー

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スペクタクルに振り切ったエンタメ

ジョーダン・ピール監督の過去作に比較して、社会批判的な要素や人種に関する表立ったメッセージは控えめになったように思います。

監督の過去作から期待するものを追い求めるなら、少し違った方向に柁を切っており、マッチングがうまく行かないこともあるかもしれません。

しかし、それを踏まえてもジョーダン・ピール監督が上質なホラーとエンタメの融合を成し遂げていることに変わりはないかと思います。

正直メッセージに寄せすぎて細部の粗が目立ってしまった「アス」に比べれば、エンタメに振った今作のほうが好きです。

まあそういう意味では、本当に「ゲット・アウト」は素晴らしいエンタメとホラー、人種社会問題の提起のバランスが良かったと再認識しますが。

そもそも黒人主演にしたUFO映画というのが挑戦的だと思います。

古典的なジャンルである未知との遭遇タイプの映画ですが、そこでの黒人俳優たちの役割は小さかったでしょう。

主軸としてアジア系のスティーヴン・ユァンも入っていますし、ここまで自然だと意識すらしませんが、主軸となる人種構成については実は革新的なのかと思います。

始まりを飾るハリウッド映画史における黒人のジョッキーの話に戻ってくるのも熱い展開ですが、目撃することが重要なこの作品では、黒人の存在を直視するという意味が込められていると思います。

大画面での鑑賞がおすすめ

また技術面の話を先にしてしまうと、音楽、音響、そして撮影など素晴らしいセクションがそろっています。

広大な大地を駆けたり、空を見上げていくということが重要な作品であるため、IMAXカメラで撮影されたそれらは圧巻のスケールと迫力を持っています。

上を意識するためにも、そしてこのスリリングさを堪能するうえでも、是非大きなスクリーン、できればIMAXで鑑賞しましょう。

私が特筆すべきと感じたのが、夜のシーンですね。カットを割らない中での撮影もあるのですが、臨場感だけでなく、その奥行きが見事。

真っ暗というわけでもなく青い画面の中で向こう側というのが、ショーハウスもOJの家も意識される構図。

スペクタクルを最大限に見せてくれるホイテ・ヴァン・ホイテマの撮影には圧倒されます。

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見世物と人間の狂気じみた関係性

さて、エンタメに振った作品ということですが、もちろんただUFO話として展開しているわけではないですね。

今作の根底には、スペクタクル(驚異的な見世物)というものの人間との関係性が描かれているものと思います。

最初の引用では、「汚物を投げつけ、おまえを見世物にする」なんて言葉が記されていますが、まさにショーを根底に置いた映画だと思うのです。

今回はUFOというあまりに驚異的なスペクタクルを目の前にしていきます。

それは実際のところ本当に最悪の奇跡と呼べるとんでもない代物であり、恐怖なのです。

しかし、おぞましい怪物すらホラーというジャンルに落とし込み、人間は見世物と化して消費するのです。

最悪の奇跡すらも消費物として見世物に

例えば何度か挿入されるチンパンジー”ゴーディ”を使ったTV番組の惨劇。

あれ自体はそもそも完全にはコントロールできない動物を無理やりに支配したショーです。

そしてそのショーの中でついに凄惨なことが起きてしまう。

ただその時、スティーヴン・ユァン演じるジュープは(これは後半に生きてくる要素ですが)チンパンジーを直視しなかったことで難を逃れる。

普通ならトラウマ級の出来事であるのですが、彼はそれすらも見世物として記念品を飾り商売にしてしまうのです。

その関係性はただジュープがおかしいのではない。

机の下で怯える少年の顔からジュープのぼやっとした顔へのカットの切り替え。

彼はあのゴーディの惨劇からまだ抜け出せていない。

ジュープは今もまだあの机の下にいて、だからこそ世界と繋がる方法は恐怖と同居することになっているのです。

コントロールできないものを無理に使うショービジネス。

それはOJが冒頭でラッキーを連れていく撮影現場もそうです。

ラッキーにCGメイク用のポイントをつけ、安全などお構いなしに後ろに立つわ、ミラーボールを見せてしまう(これも後半のUFOとの対決のヒント)。

人間とはなぜか、すべてをコントロールし驚異を商売にできると思い込んでいる。

それは果てには、父を殺すようなUFOを見つけても逃げるのではなく動画に収めて金を稼ごうというOJたちの思考にも通じています。

最終的なUFOとの対峙に現れるあのバイカーなど、どこか狂気じみている。

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逆転する見る、見られる関係、消費する関係

私たちは多くの見世物を、現実にもYouTubeのようなネット動画場にも求め、消費しているのです。そ

れが最悪の奇跡であっても、そのスペクタクルさに依存し目を離せない。

大事故などが起きたとき、やじ馬がどんどん来ることってありますよね。

そのせいでさらに交通が乱れるのにも関わらず、そしてそこにはむごい現場が待っていると知っているのに、皆それを見ようと躍起になりたかり始めるのです。

そして今作はそのスペクタクルと人間との見る、見られるの関係を逆転する。

見ていると思いきや相手もこちらを見ている。

そしてその消費対象であったスペクタクルが、文字通り私たち人間を消費するのです。

ジュープはその最たる例なのでしょう。ゴーディの惨劇を逃れてもございます最後はやはりショーと見世物に吸い込まれ消費されてしまったのですから。

予想外の展開の先にある熱さ

驚異がどのように展開していくか、それは今作における驚きの部分でありネタバレはしたくありません。

しかし全く新しい意味での「未知との遭遇」のような作品になっていることは間違いないでしょう。

最悪の奇跡の正体を目の当たりにした中で、OJの心得から対抗策を得て挑戦していく。

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そこでももちろん、見世物を手にしようという試みもありますが、むしろ弔い合戦になった気がします。

父のためです。

それが先祖代々続いてきたOJの一家の象徴であり、エンタメの原点には黒人がいたのだという証明になる。

馬を駆る黒人ジョッキーとして砂塵を巻き上げすすむOJのかっこよさに痺れます。

兄妹の絆が行きつく先は、すごいものを撮るなんていう映画そのものな展開が待っている。

マカロニウェスタン的なラストのスペクタクル、堪能しました。

撮影現場で見える、冷静さを受け継いたOJ、そして愛嬌を受け継いたエム。二人で一つとなり、互いを見つめ合うことで勝ち取った勝利。

父を殺したコインを使って最後はビッグショットかましたのです。

正直今感想を残していても、考えるほどに見えてくるものが多い作品です。

観た人同士で得たものを話し合ってみるのもまた楽しいはず。

ふとした瞬間にまだまだ反芻し気づくことが多いような上質なエンタメでした。

IMAXの上下が開けた画角、そして大きな映画館のスクリーンで堪能すべき撮影、また音響。

ぜひ劇場で鑑賞してほしい上質エンタメでした。

というわけで今回の感想はここまで。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

ではまた。

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