「イコライザー THE FINAL」(2023)
作品概要
- 監督:アントン・フークア
- 脚本:リチャード・ウェンク
- 製作:デンゼル・ワシントン、トッド・ブラック、ジェイソン・ブルメンタル、スティーヴ・ティッシュ
- 音楽:マーセロ・ザーヴォス
- 撮影:ロバート・リチャードソン
- 編集:コンラッド・バフ
- 出演:デンゼル・ワシントン、ダコタ・ファニング、レモ・ジローネ、デヴィッド・デンマン、エウジェニオ・マストランドレア 他
アントワン・フークア監督がTVシリーズを映画化した「イコライザー」のシリーズ第3作品目。
前作の「イコライザー2」に引き続き主演をデンゼル・ワシントンが努め、元DIA特殊工作員であり現在は市民のために悪を掃除する男の新たな戦いを描きます。
CIAの情報局に努め、主人公ロバートから協力を得ていくのは、デンゼルとはトニー・スコット監督の「マイ・ボディガード」以来の共演となるダコタ・ファニング。
今回はこれまでと違って舞台をイタリアの港町に移しややバカンス的な要素も組み込まれたストーリーになっています。
「ザ・シークレット・ハンター」というTVシリーズの映画版ということで始まりながら、確実にデンゼルの代表的な作品に名を連ねることになったこのシリーズも3作品目になります。
ずっと映画館で観てきた身としては今回も楽しみにしており、公開週末に早速観に行ってきました。R15指定が入っていますがIMAXの枠もあり結構にぎわっていました。
~あらすじ~
ある依頼のために、ロバート・マッコールはシチリアにあるマフィアのワイナリーを襲撃。マフィアの手下全てを殺し、ボスもカギを奪ってから始末した。
しかしマッコールは少年に油断し、背後から撃たれてしまう。
重傷を負いイタリア南部まで移動して倒れたマッコールを発見したのは、地元の国家憲兵のジオだった。
彼は町医者のエンゾのもとにマッコールを運び込み、銃創であるにもかかわらずエンゾは通報はせずに手術と治療を施す。
マッコールは療養のために町に滞在し、次第に町の人々の暖かな心に触れていく。
だが、町はナポリからのマフィアによりリゾート開発のための地上げ行為を受けており、激しい取り立てや反抗するものへの暴力が横行している。
マッコールは町の人々、そして自分の見つけた安寧の血を守るため立ち上がる。
感想/レビュー
シリーズものに出演しないデンゼルが、彼ならばと了解したアントワン・フークア監督。
イコライザーのシリーズもまさかの3作品目となり、おおよそ10年の歴史になりました。
王道真っすぐな西部劇
アメリカの地を離れて行われるのは、往年の王道西部劇であります。
暴力の渦の中から流れ者が一人、田舎の小さな町へとやってくる。
そこで交流を深めていき、その血に染まった男は安らぎを覚えていくのですが、やはりギャング団がいて住民を苦しめているわけです。
筋書きは別に突飛でもないですし、変にツイストを加えてもいません。
だからこそシンプルで楽しめて、そしてまっすぐと感情移入していくことができるようになっています。
この辺は何にしてもフークア監督が町を描くことに秀でていることが大きいと思いました。
安息の地としての町の描写が良い
「トレーニング・デイ」でもLAの特に治安の悪い町を、その空気や、その場にいなければ感じないような繊細な部分まで描いていた監督。
映画のおおよそ半分といっていいくらいは、この町の描写になっていますが、切り取り方が巧くて本当にロバートと一緒に療養しているようです。
人々の営みであったり、往来など、もともと撮影の舞台となったアマルフィが映えるのもあってすごくいい雰囲気でした。
実は後半というか、イコライザーとしての活躍という意味では正直あっさりしていて小規模。
ためにためていくスタイルが拍子抜け感すらあるのですが、観終わってみるとこのロバートが過ごす町をじっくりと見せていたことがすごく良かったと思えます。
今作には久しぶり、おおよそ10年くらいぶりの再会があります。
ダコタ・ファニングとデンゼルの共演。ストーリー上のああだこうだはもう良いです。
この二人が、特にすっかり年を取ったデンゼルと、成長し大人の女性になったダコタが並んでいるだけで、会話しているだけでいいのです。
特定の俳優がただそこに、スクリーンで並ぶだけで満足することってありますよね。今回のがそれです。
一応は、これまでと同じように、ロバート・マッコールは激励し誰か若い世代を応援し伸ばしていく、そのプロットが含まれています。
町の人たちへの配慮やケアに、頑張る誰かを支持すること、そこにこのイコライザーシリーズの良さがあります。
私が大好きなのは、ロバート・マッコールは世話焼きであることです。それも死ぬほど。
そしてその可能性を信じれば、彼はどうあっても諦めない。
殺人マシーンではなくて人の心が宿っている。得意なことをしているだけですが、やはり人情モノなんですよね。
小さな演出の妙
あとは語りの部分でもスマートさがあってよかったです。
町の階段を何度も上るシーンがありますが、そこで杖が要らなくなっていったりステップが軽くなり最後は駆け足もできるようになる。回復具合をみせながら町も案内してくれています。
また、バイクの音も良い演出であったかと。
「あの夏のルカ」でも出てきたベスパが町ではよく使われています。その音とは異なり、爆音で重苦しいバイク音が、マフィアのチンピラどもの音。
背景に現れるこのバイク音で、平穏と不穏を奏でているのはすごく良かったです。
暖かさあふれる一方で、もちろん残虐処刑映画でもある。
序盤のワンカットで見せていく襲撃後のシーン、闇と光をうまく使いながら死体の数々を映し出す。行為ではなくて結果でマッコールのすごさを示しています。
デンゼルのシルエットを、ブラックとホワイトを強烈に使いながら映し出す撮影もクールでした。これは後にマフィアの弟とその仲間たちを殺していくところでも同じです。
悪に対しての容赦のなさも徹底していて、その辺は過去作に比べてあっさりとした印象はあれど、ファンが納得するレベルにはなっているかと思います。
1作品目のホームセンターの下りとか、2作品目での車内での格闘に比べると、すこし抑え気味にも思います。そこら辺についてはデンゼルが年を取ったのも要因かも?
ただ、最後にボスを殺す際に、まるで死神のようにただ横に佇み、死を迎えていく様を眺めているのは圧倒的な存在感でやっぱりデンゼルめっちゃカッコよかったです。
最後に分かる、序盤のワイナリー襲撃の裏側。マッコールっぽい。
ちなみに今後どうなるのかは分からないのですが、ダコタ・ファニングと続いて共演しながら師弟関係での続編を期待したい。
途中に尋問があるシーン、ライティングも相まってはいますが、ダコタの顔がすごく良かった。
デンゼルだけが出せる奥深く深淵な闇をたたえた瞳。それをあのシーンではダコタも持っていたんです。ちょっと怖かった。
とにかく邦題ではファイナルになってますが、原題ではただの3なので、また次も観てみたいですね。
今回の感想はこのくらいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
ではまた。
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