「ライオン・キング ムファサ」(2024)
作品解説
- 監督:バリー・ジェンキンス
- 製作:アデル・ロマンスキー、マーク・セリアク
- 製作総指揮:ピーター・トビヤンセン
- 脚本:ジェフ・ナサンソン
- 撮影:ジェームズ・ラクストン
- 美術:マーク・フリードバーグ
- 編集:ジョイ・マクミロン
- 音楽:デイブ・メッツガー
- 楽曲:リン=マニュエル・ミランダ
- 出演:アーロン・ピエール、ケルビン・ハリソン・Jr.、マッツ・ミケルセン 他
ディズニーの名作アニメーション「ライオン・キング」を最新技術で再構築した2019年の実写映画版。その前日譚として、若き日のムファサ王とスカーの兄弟愛と葛藤を描く物語が新たに描かれます。
監督は「ムーンライト」のバリー・ジェンキンス。
「オールド」のアーロン・ピエールがムファサ役、「WAVES ウェイブス」のケルビン・ハリソン・Jr.がスカー(若き日のタカ)役。さらに、マッツ・ミケルセンやビヨンセ・ノウルズ=カーターも声の出演をしています。
脚本は「パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊」のジェフ・ナサンソンが担当。音楽は「モアナと伝説の海」のリン=マニュエル・ミランダが手がけています。
年末ディズニー映画枠として公開された今作ですけれど、公開週末に見てきましたがあまり人がいなくて。IMAXなどもやっていましたが、今回は通常字幕版での鑑賞です。
「ライオン・キング ムファサ」のディズニー公式サイトはこちら
~あらすじ~
息子シンバを命を賭して守ったムファサ王。その壮絶な運命の始まりには、後に彼の命を奪う存在となるスカーとの出会いがあった。
幼い頃、両親を失い孤独に彷徨っていたムファサを救ったのは、王家の血を受け継ぐ心優しいライオン、タカ(後のスカー)だった。
血のつながりを超えて兄弟として深い絆を結んだ二頭は、成長していく。しかし、彼らの住んでいるところに、冷酷なライオンたちが現れすべてを支配しようとした。
タカの両親は殺され、そしてムファサとタカはそのライオンたちから逃げながら、どこかにあるという楽園を目指し旅に出るのだった。
感想レビュー/考察
受け入れやすいシェイクスピア劇ながら、内容が薄い
もともとアニメーションの作品は子どもの頃に何度か見た記憶がある程度で、はじめの2019年の実写化の方は鑑賞していません。
あまり思い入れがない中での、前日譚の鑑賞ですが、個人的には正直すべてにおいて薄い感じがしました。
きっと1994年のライオン・キングが持つ世界観やファンへの魅力はとても大きいものであると思います。
そもそもの話がシェイクスピア的なもので、受け入れるベースはあると思いますし、アニメーションの出来栄えやなによりもエルトン・ジョンなども絡んでの楽曲も非常に有名。
ディズニーは「ジャングル・ブック」の成功あたりからかなり、クラシックアニメの実写化に力を入れ始め、ライオン・キングも例外ではなかったようです。
実写風アニメの弊害
ただ、この作品のジャンル、カテゴリは何と言っていいのか分かりません。なにせ人間が一切出てコアないために、実写の部分というのがないのです。ようするにハイパーフォトリアリスティックなアニメである。
ではライオン・キングにその実写寄りのアニメが必要なのかという点で、どうにも疑問が残ります。それはオリジナルの2019年版もそうですから、今作でもその点はぬぐえぬままでした。
動物園やサバンナに実際にいるライオンたちが、動物たちが、歌いはじめる。人間ではないゆえに違和感が逆に強まってしまうように思えます。
さらにもっと苦しかったのは、リアルな現実に寄せているのに、アニメーション的な解決が多いこと。アニメなら、草食獣と肉食獣が友達であってもまあ良いでしょう。
しかし実写ではどうでしょうか。食物連鎖のことや、実際に受けるダメージと血、欠損などが本能的に意識されるフォーマットだからこそ、洪水に巻き込まれても吹き飛ばされてもかみつかれても、薄汚れもせず傷もなくてそして血も流れない。
とにかく映像表現がノイズにばかりなってしまいました。
そのうえで、薄さの部分では敵の怖さにもマイナスに働いたと思います。血肉が出てこないこと、だから今作のヴィランであるホワイトライオンのキロスがあまり怖くない。
マッツ・ミケルセンの声をもってして、そして「バイバイ」の歌を携えても、唸るだけで殺戮の味はしないのです。
ムファサ王の前日譚って必要なの?
ムファサの前日譚として、あのムファサ王のドラマチックさが強く出ているかというのも微妙です。
たしかにムファサの父も、子どもを助けるために濁流に飛び込んでいますし、最終的には無くなってしまっています。
ただ、だからと言ってムファサがシンバを救うためにヌーの群れの中に飛び込んだことと呼応するかというとそうでもない。
なんどもタカの爪がムファサの腕に食い込むシーンが繰り返されますが、それもオリジナルへの目くばせというレベル。
キロスとの出会いと闘い、平和の谷を目指したこと。それらが総合的にムファサ王の背景を濃くしたかというと、あまりYESとは言えませんでした。
ミレーレの動物たちが怖がっていたくせにムファサの声掛けですぐに団結したり、あのうるさいコミックリリーフの鳥がいちいち話の流れを止めたり。感情動線もあいまいです。
なぜ前日譚が必要だったのかの疑問がぬぐえず、映像表現や声の出演者たちの技量には楽しみがありながらも、内容も存在意義も薄い作品だったと感じました。
今回は結構酷評になってしましましたが、感想はここまで。ではまた。
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