「スライ: スタローンの物語」(2023)
作品概要
- 監督:トム・ジムニー
- 製作:ショーン・スチュアート
- 製作総指揮:シルベスター・スタローン、トム・フォーマン、ジェニー・デイリー、ブレイデン・アフターグッド
- 撮影:ジャスティン・ケイン
- 編集:トム・ジムニー
- 音楽:タイラー・ストリックランド
シルヴェスター・スタローンの素顔に迫るドキュメンタリー。
「ロッキー」、「ランボー」シリーズなどで知られるハリウッドスターが、俳優だけでなく監督、脚本家、プロデューサーとして50年以上にわたり活躍してきたキャリアを振り返っていく。
トム・ジムニーが監督を務め、スタローン自身によるインタビューを通じて、彼が演じてきたキャラクターとの関連性を探ります。
一般公開ではなくてNETFLIXでの配信公開。しかし結構前からスタローンのドキュメンタリーのことは聞いていたのですごく楽しみにしていた作品です。
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感想/レビュー
俳優についてのドキュメンタリーは、観る人が俳優に対してどのくらい知識を持っているのかによって、濃度、粒度が変わってきます。
私はそこそこスタローンのことを知っていたり、出演、監督、脚本を書いた映画も見ています。
スタローンが好きだからこそこのドキュメンタリーを観ました。
変わり種ではないがまっすぐな俳優についてのドキュメンタリー
この作品はおおよそシルベスター・スタローンの魅力を詰め込み、彼のキャリアと作家性を理解できるようなつくりになっています。
どちらかといえばすごく意外な切り口ではなくて、彼に対する導入といった作りだと感じます。深くまでもぐりこむわけでもなくて、変わった断面をみせるわけでもない。
ただまっすぐにいい意味でスタローンらしいドキュメンタリーになっています。
ロッキー、ランボー、バニー。
映画俳優として代表的なキャラクターを持ち、さらにそれがフランチャイズ化している俳優は稀有です。
それはアートハウスの意味ではなくなったとしても、映画という芸術分野の大衆娯楽の面での大スターしか成しえません。
ハン・ソロとインディ・ジョーンズを持つハリソン・フォードがそうであるように、代表的なシリーズもののキャラクターを複数持っているスタローンってやっぱりすごく珍しい人物ですよね。
しかも彼の面白い点は、自分で自分自身をプロデュースしているということ。
だから自分が求められている面、顔、演出を理解し尽くしながら、どのキャラクターにもシルベスター・スタローン自身の内面が投影されています。
「ロッキー」はニューシネマの空気とそこでもがく若者を嘘偽りなく、持たざる者たちの再起をそのまま映画化したような作品です。
ドキュメンタリーでも言われますが、ロッキーは勝ってはいない。
父親との関係性を赤裸々に語り、愛や注目を求める少年としてのスタローンが、ロッキーには詰め込まれていました。
もちろん彼には社会情勢やすごく人間の根底にある愛の渇望などを欲する感情の読み取り能力があって、それにこたえてもいる。
ランボーはスタローンの優しさが光ります。
壮絶な原作を、負の部分はそのままに残しながらもランボーに最後の最後で助けを出す。改変についても語られています。
その後も彼は非常に敏感に、求められている”アメリカの大スター、シルベスター・スタローン”を体現していく。
時代と共にニーズをつかみながら、アーティストとしても挑戦を重ねるスタローンの姿を追っていきます。
スタローン自身が最大の弱点
今作ははじめから最後までスタローンについて理解するにはすごくいいと思う一方で、実は題材がシルベスター・スタローンであること自体が最大の弱点である気がします。
スタローン自身の語りで紡がれていくドキュメンタリー。伝記映画のようでもありますが、セルフプレゼン。
これもまさに、彼自身が自分を売り込む手腕に長けていること、相対化して語れるだけの観察眼を持っていることの証明。
下手に他人の視点や周囲の人間のインタビューで固めるよりも、スタローンが自分で案内したほうが面白いわけです。
そしてただのインタビューでもその言葉が映画の中の名セリフかのように聞こえるんですよ。
ただ話しているだけで名言が流れてくるなんて、さすがシルベスター・スタローンです。
引っ越しの準備として、様々なものが、キャリアが詰まった家を整理していく。家は彼にとって家族の整理にもなっていて、彼の脳内のような家を隅々まで見ていくという演出なのかもしれません。
総じてシルベスター・スタローンへの深すぎないレベルでの観察であり、ドキュメンタリーのスタイルそのものがプロデュースする手腕のショーケースになっています。
驚きはえられないのですが、やはりスタローンは熱く、温かく、そして深い。それをしっかりと感じさせてくれるので万人に観てもらいやすいドキュメンタリーだと思います。
今回の感想はここまで。
当人を薄めて、研究としてとか他者の視点や違った切り口でもスタローンを見てみたいなとも思います。
それではまた。
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