「秘密の森の、その向こう」”Petite Maman”(2021)

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「秘密の森の、その向こう」(2021)

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作品概要

  • 監督:セリーヌ・シアマ
  • 脚本:セリーヌ・シアマ
  • 製作:ベネディクト・クーヴルール、セシル・ネグリェー
  • 音楽:ジャン=バプティスト・ドゥ・ロビエ
  • 撮影:クレア・マトン
  • 編集:ジュリアン・ラシュレー
  • 出演:ジョセフィーヌ・サンス、ガブリエル・サンス、ニナ・ミュリス、マルゴ・アバスカル、ステファン・ヴァルペンヌ 他

「燃ゆる女の肖像」で世界中の人々に生涯の一本を与えたフランスのセリーヌ・シアマ監督が、祖母を亡くした少女と彼女が出会う幼いころの母との交友を描く作品。

主人公を演じるのは今作が初めての映画出演になるジョセフィーヌ・サンス。また森で出会う8歳の母を彼女の双子の姉妹ガブリエル・サンスが演じています。

主人公の母親役にはニナ・ミュリス。また祖母はマルゴ・アバスカルが演じています。

今作はシアマ監督自らが脚本を執筆し衣装も担当。

作品はベルリン国際映画祭でコンペティションに出品され、作品賞ノミネート。

そのほか様々な映画際や賞でノミネート・受賞、英国アカデミー賞BAFTAでも外国語映画賞にノミネートしました。

シアマ監督の新作ということと、そのプロットのファンタジックさに惹かれ、映画館で予告を見るだけでその美しさに胸を打たれた作品。

公開を楽しみにしていました。

公開週末に早速観に行ってきましたが、朝早かったのと台風接近の影響もあってかそこまで混んではいませんでした。

「秘密の森の、その向こう」公式サイトはこちら

~あらすじ~

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8歳の少女ネリー。

大好きなおばあちゃんが亡くなったことで悲しみを胸に死ながら、両親とおばあちゃんの家の整理に行く。

森の中に佇むおうちには、母の少女時代の想い出もつまっている。

何をみても想い出と喪失に心を締め付けられる母は、一人で家を出て行ってしまう。

ネリーはパパが家をかたずける間、森の中で母が昔作ったという小屋を探しに出かけた。

しかし森の中で出会ったのは母と同じマリオンという名前の8歳の少女。彼女の家に招かれて森を抜けると、そこはおばあちゃんの家だった。

感想/レビュー

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セリーヌ・シアマ監督の描き出す世界というか。このどこまでも繊細で静かで豊かな空気にはずっと浸っていたい。

これはまさしく映画であり、そして映画が巻き起こす魔法です。

シアマ監督はこれまでにも女性を主軸に映画を作ってきました。

そして、「トムボーイ」における子どもの視点と世界を再び登場させ融合し、ここに母と娘、そして祖母の連なる女性たちの生を描き出したのです。

これまでセリーヌ・シアマ監督は監督作より脚本執筆が多いわけですが、今作は結構思い入れのあるものだそうで、自分で執筆しつつ監督もしています。

そこには監督らしい色彩や音、演出も含まれていますが、監督自身衣装も担当してかなりこだわっているみたいですね。

監督、脚本、衣装の3セクションのコントロールは「ガールフッド」と同様です。

時空を超える映画の魔法

設定だけで観ればファンタジーであり、デロリアンの登場しない「バック・トゥ・ザ・フューチャー」です。

BTTFで主人公のマーティは、自分とちょうど同じ年頃の両親に会い彼らの青春や考えを知った。

そこにあるのはあり得ない現実であり、しかしあれはスピルバーグ監督の手によって映画という現実になって観客に与えられ共有されています。

今作も同じですね。

ネリーはもっと母に寄り添いたいし知りたいと思う。

でも、娘がまるで本当の友達のように母親に接するのは難しいでしょう。

セリーヌ・シアマ監督は映画という魔法の力で、娘と母を現実ではありえない方法で出会わせたのです。

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子どもも感じているけれど、同等に接することはできない

OPすぐに見せられる演出がとびぬけて素晴らしかった。

車の中に入って窓ガラス越しで母と父を見るネリー。会話は聞こえず見ているだけ。この感覚です。

大人たちの会話に入ることはできないし、考えを知れない。それでも、子どもは観ていて感じている。

ネリー自身抱える喪失のほかに、母が悲しんでいるという事実を感じ取り、またそれにも悲しみを感じているのです。(この点はシアマ監督脚本の「ぼくの名前はズッキーニ」にも共通しています。)

車を運転するマリオンと後部座席でお菓子をたべるネリー。(ネリーのお菓子の食べ方が子どもらしくて超かわいいです)

マリオンの横顔のショットにすっとネリーの小さな手が出てきて、お菓子を口へ、ジュースを口へ運ぶ。そしてそのあとで小さな手は母を抱きしめる。

会話もない、音楽もない。でもこれだけでこの母と娘の絆が見て取れます。

そして同時にやや寂しいですが、ネリーが同じ画面に映らない。

そこにやはり共有できない心の中の示唆も感じます。

その他壁紙、壁の中の棚。セリフもない映像だけでの小さな語りもさすがシアマ監督でした。雄弁です。

平等に結ばれる母と娘

そこでセリーヌ・シアマ監督の魔法が本当に素晴らしい力を発揮します。

これは本当に時空を超えてなのか、はたまたネリーの頭の中なのか。

しかしあまりにさらりとしていて、森の中を抜けていくだけというシンプルさで母と娘を繋ぐ。

立場を越えて二人の少女として、親友として繋ぐのです。

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親子であるための近さとともに、遠さがある。

母とおばあちゃんの想い出を振り返る中で、ネリーは母が悲しんでいることを感じても、心のうちまでは聞けない。

どうして出て行ってしまったのか。それを聞くチャンスもなく、また直接問いかけるのもとても難しいでしょう。

そこでこの森の魔法がある。

ここにきてネリーは母が自分の年だったころと出会い、その考えを知りそして直接問いかけます。

娘としての問いを、娘ではなく親友としての平等な立場で投げかける。これを映画の魔法と言わずなんというか。

不思議な森や世代を超えたファンタジーにはジブリっぽさも感じます。「想い出のマーニー」あたり。

優しい撮影と練りこまれた衣装

今作では「燃ゆる女の肖像」でも組んだセリーヌ・シアマ監督のチームが再集結しています。

撮影はクレア・マトン。

全体の色彩の光彩、再度落としめの優しさが、喪失をテーマにした今作を冷たいものではなく、暖かなものにしています。

森の木々の緑に、ネリーが彩として加える小屋の紅葉の紅。

家の中で父の髭剃りを手伝うところとか、何処をとっても絵画的でとても美しい。

OPすぐの窓枠を前に背を向けている母のショットから私は画で魅せられて終始楽しかった。

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衣装において、マリオンは子どものころと大人になってからでカラーに統一があります。

トップスには赤、パンツがブルー。もちろん同じ人物だから統一しているという判別の面での意味もあるでしょう。

しかし、ここで示されているのは、母はやはり幼いマリオンの延長線上にいる存在で、8歳の娘というものを持ったまま生きているということだと思います。

途中でマリオンもブルー基調の衣装になって、二人が一つになったような感じになるのも素敵。

主演二人の自然なアンサンブル

今回映画初主演となった双子のジョセフィーヌとガブリエル。

シアマ監督の子どもの演出もありますが、やはり二人の力あってこその作品に思います。

とても自然で、無理やりに大人過ぎない感じでありながら、やはり見つめている世界はしっかりとしている。そのバランスが絶妙。

歩き方とかちょっとぎこちなくて、走り方も良い意味で全力。

子どもらしさを子どもらしいねって見せ方してなくて、自然に子どもを眺めている感じ。

ハサミ使うところは刃物気を付けて!って思うし、コンロ使うときも火気を付けてってなる。

役者がそこで演じているという感覚を取り払い見事。

やはり双子だけあってそのじゃれあいとかクレープ作りも本当に楽しそう。

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喪失に対する癒しから未来へ

不安と怖さを抱えていたマリオン。

森を抜けて幼い母と出会い、直接それを聞けたネリーは「きっと大丈夫」と慰めることができました。

そして抱きしめた。

車の後部座席からと違って、お互いに向き合って抱きしめ合う。

そしておばあちゃんとの再会。ネリーはさよならを言えなかったことを後悔しています。

おばあちゃんの寝ていたベッドに横になる切なさと寂しさ。

だから最後に救われる。直接お別れを言うことができたから。

森の魔法は母と娘を繋ぐだけでなく、不安や寂しさ、喪失の悲しみを共有し、そして癒やしをもたらした。

最後に流れるLa Musique du Futur(未来のうた)が素晴らしい余韻をくれます。

過去を抱きネリーは未来を生きる。

子どもの視点から描かれている分、子どもたちにも見てほしいくらいの全年齢対象作品。

正直何もかも素晴らしくて書き連ねるよりもとにかく観てほしいという気持ちでいっぱいです。

シアマ監督のこの先の作品もずっと追い続けたい。

というところで感想は以上です。

最後まで読んでいただきどうもありがとうございました。

ではまた。

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