「ヒックとドラゴン 聖地への冒険」(2019)
- 監督:ディーン・デュボア
- 脚本:ディーン・デュボア
- 原作:クレシッダ・コーウェル
- 製作:ボニー・アーノルド
- 製作総指揮:ディーン・デュボア、クリス・サンダース
- 音楽:ジョン・パウエル
- 画面構成:ギル・ジマーマン
- 編集:ジョン・K・カー
- 出演:ジェイ・バルチェル、アメリカ・フェレーラ、ケイト・ブランシェット、F・マーリー・エイブラハム、ジョナ・ヒル、クリステン・ウィグ、クレイグ・ファーガソン、ジェラルド・バトラー、キット・ハリントン 他
ドリームワークスが送る大ヒットアニメーションシリーズ「ヒックとドラゴン」の第3作目にして完結作。
監督はシリーズを作り上げてきたディーン・デュボアが続投し、その他ジェイ・バルチェルやアメリカ・フェレーラなどのメインキャストも同じメンバーがそろっています。
日本では12月20日に公開が決まっていますね。
前作「ヒックとドラゴン2」はまさかのDVDスルーとなってしまった(ゴールデングローブ賞取ったのに)のですが、3は劇場公開に踏み切るという謎の判断。
今作も北米公開後の一般評価も批評家たちの評価も高く、期待の一本。
予告観てからずっと楽しみで、日本公開は本当にうれしいのですが、年末って・・・!
我慢できずに北米版ブルーレイ買って鑑賞しました。
ドラゴ・ブラドフィストとの戦いからしばらく、ヒック達バーク島のドラゴンライダーたちはドラゴントラッパーの手からドラゴンたちを救出することに注力していた。
バーク島は人間とドラゴンが共存するユートピアとして栄えていた。
しかし一方でどんどんと助け出されてくるドラゴンたちで、島が溢れかえっていた。
このままでは食糧難に、なにしろスペースも足りない。
でも、かといって捕まえられ軍隊にされてしまうドラゴンたちを放っても置けない。
ヒックは、かつて父ストイックが幼い自分に話してくれた、世界の果てにあるというドラゴンたちの故郷、”ヒドゥン・ワールド”(隠された世界)を思い出す。
そしてその理想郷を探し出し移住することこそが、問題解決のカギだと考えた。
これまで愛されてきたアニメーションシリーズの完結編として、スケールを過剰に大きくすることはなく、豊かな色彩や魅力的なキャラクターたちはそのままに、少し切ない最後のピースに仕上がっています。
ビジュアルの情報量やそのなかでの整理、(アニメーションには撮影はないですが)カメラワークの秀逸さなどは健在。
各キャラクター、ドラゴンの色使いやシェイプ、サイズをうまく差別化し、大量に画面に登場してもしっかり個を認識できます。
また何より画作りが素晴らしい。思わず息を飲む絶景というか。
見た瞬間に自分の時間が止まったような、美しい光景が多いです。
この点は今までで一番のクオリティになっていて、スコアのメロディも相まってシリーズ1だと思います。
一部には単純なCGではなくマットペインティングのような質感も感じましたが、ここの綺麗なこと。
また広大な背景に小さくキャラクターを映し出す瞬間もあり、そのスケール感や奥行きに心奪われてしまいます。
これは絶対に大きなスクリーンで見るべきと言えますね。
またキャラクターのアニメーション、その動き、所作や細やかな表情まで本当に豊かです。
CG技術が本当に高まっていて、どこまでもディテールが詰め込まれています。
布や金属、ドラゴンの皮膚だけでなく、水や岩、砂までどこまでもクオリティが高く、心地よい。
また表情やアクションは人間だけでなく、ドラゴン側の躍進が大きいです。
というのも、ライト・フューリーとトゥースの交流に至っては、ドラゴン同士のアニメーションだけで、台詞もなく映像表現だけで見せているんです。
瞳孔の開きやちょっとした姿勢、羽ばたき方など本当に表情豊かで素晴らしい。
やはりビジュアル目当てでもスクリーンで観る価値があります。
そしてメインのお話ですが、苦い方向へと向かったのも納得です。
というのも、シリーズに対してあった批判に向き合った結果なのかと思います。
まず逃げなかった点がスゴいと思うのと、まとめ方としても素晴らしい。
ドラゴンをペットとすること。
人間に従わせ飼い慣らす(train)ことが世界の理想というような形に、少なからず批判がありました。
そこに向き合う上で、今作ではドラゴンハンターであるグリメルを登場させました。
邪悪な中にもユーモアがあり魅力的なキャラクターですが、なによりヒックと鏡像関係にあるのが重要です。
今作は1作目を意識させるシーン、呼応する場面が多いのですが、このグリメルはまさに1作目の始め、ヒックがトゥースレスを殺していたら?という姿。
彼はドラゴンを熟知しており、それはまさにヒックと同じです。
ただ、グリメルはドラゴンを殺す。
グリメルは加虐的ですが、ライト・フューリーとトゥースを見たとき、バーク島のあり方にも疑問が出てきます。
果たして本当に、このあり方がドラゴンたちのために良いのか。
そこで違和感になっていた、人がドラゴンを所有するというところに切り込んでいき、なんとも切ないお別れが訪れます。
ドラゴンなしでは何もできないわけじゃない。
ドラゴンが翼をくれたから。空を飛ぶ自由な感覚をくれた。
そしてその翼で世界が広がった。
何より、いろんな違いがあっても一緒に暮らせることを教えてくれた。
そして、種族が違っても、相手を思いやり究極の自己犠牲を払う。
その姿こそ、”クレイジー”なヒックとトゥースの到達点。
世界にはやはり、ヒックが考えていたようなユートピアもなく、そしてどうしても理解しあえない悪も存在します。
1作目の頃からだんだんとダークに、どうしても解決できない世界の問題を描き続け、ついに限界を迎える。
ある意味でヒットとトゥースは負けたのです。
ですが、今作は同時に、彼らをあえて負けさせることにより、このシリーズを私たちの物語にしてくれたと思います。
ドラゴンのいる世界は、私たちの世界。
ファンタジーでもなく、ドラゴンは確かにいるのです。
ただ、私たちの世界はドラゴンが戻れるところではない。彼らに値しない。
でもいつの日か、みんなが互いを認めて、より良い世界のためそして他者のために立ち上がれる時が来れば。
きっとドラゴンたちは再び私たちの前に現れるのです。
How to Train Your Dragon。ドラゴンの手なずけ方。
私たちにも、私たちのドラゴンを得る方法があるはずですね。
そうなれる日までは、しばしお別れ。
でも、ドラゴンたちに出会えたことはかけがえのないものになる、ヒックも世界も、これを観てきた観客も大きくしてくれました。
大好きなシリーズの完結。
少しビターな締めくくりですが、シリーズ愛に溢れていて、そしてこのバディの軌跡を単なるファンタジーではなく私の生きる世界にしてくれた。
出会えて本当に良かった物語。絶対に映画館にも観に行きます。
今回の感想は以上。
できれば過去作、特に劇場公開されていない2はスクリーンでやってほしいですね。多くの人に見てほしいですから。
最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。
それではまた次の記事で。
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