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「ティル」”Till”(2022)

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till-2022-movie 映画レビュー
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「ティル」(2022)

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作品概要

  • 監督:シノニエ・チュクウ
  • 製作:キース・ボーチャンプ、バーバラ・ブロッコリ、ウーピー・ゴールドバーグ、トーマス・レビン、マイケル・レイリー、フレデリック・ゾロ
  • 製作総指揮:プレストン・ホームズ、シノニエ・チュクウ
  • 脚本:マイケル・レイリー、キース・ボーチャンプ、シノニエ・チュクウ
  • 撮影:ボビー・ブコウスキー
  • 美術:カート・ビーチ
  • 衣装:マーシ・ロジャーズ
  • 編集:ロン・パテイン
  • 音楽:アベル・コジェニオウスキ
  • 出演:ダニエル・デッドワイラー、ウーピー・ゴールドバーグ、ジェイリン・ホール、ショーン・パトリック・トーマス、ジョン・ダグラス・トンプソン、ヘイリー・ベネット、フランキー・フェイソン 他

1955年にアメリカ合衆国のミシシッピ州で発生した「エメット・ティル殺害事件」。

アフリカ系アメリカ人の公民権運動を大きく推し進めたきっかけとなり、その後のエメットの母メイミーの闘いを描いた物語です。

「ザ・ハーダー・ゼイ・フォール 報復の荒野」のダニエル・デッドワイラーが主人公のメイミーを熱演し、その演技でゴッサム・インディペンデント映画賞を含む数々の女優賞を手にしました。

また、名優ウーピー・ゴールドバーグもこの作品で共演。さらに彼女は製作にも重要な役割を果たし、作品の成功に貢献しました。

今作は2022年に高い評価を得てはいたものの、アカデミー賞ではノミネートがなく。そのことで監督シノニエ・チュクウも批判の声を上げていました。

日本での公開も賞レースにかかわりがなかったためか結構遅れていて、1年後の公開になりました。

公開週末に行きたかったのですが、そこでは予定が合わず。平日の夜の回で鑑賞してきました。

「ティル」の公式サイトはこちら

~あらすじ~

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1955年、イリノイ州シカゴ。

夫を戦争で失い、空軍で唯一の黒人女性職員として働くメイミー・ティルは、14歳の息子エメットと穏やかな日々を送っていた。

ある日、エメットは初めて生まれ故郷を離れ、ミシシッピ州マネーの親戚の家を訪れる。

しかし、飲食雑貨店で白人女性キャロリンに向けて口笛を吹いたことで白人たちの怒りを買い、8月28日、白人集団に拉致されて凄惨なリンチの末に命を落としてしまう。

息子の惨状を目にしたメイミーは、この非情な事件を世に知らしめるべく、大胆な行動に出る覚悟を決めた。

感想/レビュー

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エメット・ティルの物語について、この作品を観る前に知らなくても大丈夫です。

おおよそ映画をよく見ていたりすると、なんとなくアメリカの歴史も入ってくるもので、その中にはやはり公民権運動が含まれています。

有名な事件や抗議活動、キング牧師やマルコムX、今作でも登場するメドガー・エヴァースのことなども名前が上がります。

今作で注目されているエメット・ティルですが、「アメリカン・ユートピア」で流される楽曲の”Hell You Talmbout”にも含まれているのは覚えています。

メドガーのことは「私はあなたのニグロではない」でも描かれています。

そんな背景を知っているという方にとっては、ちょうどいい長さでエメットが受けた凄惨な仕打ちや事件の流れを再確認できます。

一方で、説明不足とはならないほどに、これから知っていく方にも親切な作りになっていました。

こういった作品は単なるエンタメにとどまるということはなく、存在に意義があり議論を加速させる目的があると考えています。

その意味で今作は役目を見事に担うのではないでしょうか。

知らなかった人に、実に70年くらいの時を超えて惨たらしい事実と今起きている問題を繋ぎ、思考させるわけですね。

今作はエメット・ティルの事件を描き出しながら、歴史的な瞬間もめぐっています。

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なんとなくエメット・ティルの遺体の損壊については、抗議のためのイラストやポスター、当時の写真をどこかで観た程度でしたが、このように映像としてもう一度作り上げられ見せられると、また衝撃は違いました。

観るメディア、芸術としては、やはり(実際その時代に彼の葬儀に参列していなくても)目の前でその事実を見つめることに意味があるのです。

さて作品が意義深いことは分かるのですが、ストーリーについてだったり映画としてはどんな印象だったかと。

必要十分に残虐ではあるのですが、やや物足りなさも感じてしまいました。

先に言ったようにエメット・ティルの事件を描写する必要があるというために、再現ドラマ的な風合いも持ってしまい、一歩引いた視点に感じてしまったというのも否めません。

その場にいて暴力を体験するというよりも、むしろ再現されたドラマを眺めている感じでした。

ここは母を主人公とするゆえに、距離をあえて置いてるのかもしれません。

その後、ストーリー的には法廷劇になっていくというのも、実際そうなのですが少しプロット違いにも感じたところです。

それでもグッと物語を引っ張っていってくれているのは、今作の主人公であるメイミーを演じたダニエル・デッドワイラー。

彼女のスタンスはやはり常に北部黒人のものですが、息子におきた問題からすべての黒人の問題へと議論を進めます。

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デッドワイラーの力強さがあってこそ、法廷劇においても、根底にはメイミーの物語を保ていていた。

裁判での凄まじいクローズアップでのワンカットでの証言においても、常にデッドワイラーは黒人権利の活動家ではなくて、息子を最悪の形で失った母としての声を上げていました。

実際の記録なのか不明ですが、彼女をメイミーと呼び捨てにしていた周囲の人間が、その悲痛な声や尊厳に敬意を払うように、ミスを付けて呼ぶところなど演出が効いています。

エメット・ティルの事件ではありますが、ちょっとそこからは距離を置き。

メイミーを主題とした映画。

母としての悲しみと黒人社会の悲しみ。母としての怒りと黒人社会の怒り。

母親の物語としてみれば凄まじい力をもったダニエル・デッドワイラーのおかげで輝く作品。

既に70年ほどの年月が経とうというのにも関わらず、奇しくもこの作品が公開された年にやっとアメリカではエメット・ティル反リンチ法が可決するという皮肉。

作品名をティルにしたのは、エメットと同時にメイミーの物語であるからでしょうけれど、前置詞のtill(〜までずっと)という、長き闘いを思わせるところもあります。

メイミーの衣装関連がどこでもその自分のスタイルを貫くようにオシャレである点とか、ボストンの家の美術とかも見どころでした。

「グローリー 明日への行進」であったり、人種差別との戦い、公民権運動にかかわる事件を確実に現代に呼び戻し、教科書もしくはまるでファンタジー世界のように感じてしまいそうなことを、実は少し前のことであると教えてくれる。

エメットが生きていれば、今80代です。

この幼い命が奪われたことと、その残虐な悲劇を世界に広げ戦った母のことを刻む作品でした。

年末に映画を見る機会があれば、こちらおススメです。

今回の感想は以上。

ではまた。

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