「マイティ・ソー バトルロイヤル」(2017)
- 監督:タイカ・ワイティティ
- 脚本:エリック・ピアソン
- 原案:クレイグ・カイル、クリストファー・ヨスト、エリック・ピアソン
- 原作:スタン・リー、ラリー・リーバー、ジャック・カービー
- 製作:ケヴィン・ファイギ
- 製作総指揮:ルイス・デスポジート、ヴィクトリア・アロンソ、ブラッド・ヴィンダーバウム、トーマス・M・ハメル、スタン・リー
- 音楽:マーク・マザーズボー
- 撮影:ハビエル・アギーレサロべ
- 編集:ジョエル・ネグロン、ゼン・ベイカー
- 出演:クリス・ヘムズワース、マーク・ラファロ、トム・ヒドルストン、テッサ・トンプソン、ジェフ・ゴールドブラム、カール・アーバン、イドリス・エルバ、ケイト・ブランシェット、アンソニー・ホプキンス 他
MCUで展開されている、雷神ソーの物語の第3作目。
前作としては「マイティ・ソー ダークワールド」(2013)、またソーが最後に出ているという意味では、「アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロン」(2015)の流れもあり、そしてMCU全体では「スパイダーマン:ホームカミング」(2017)にも続く作品と言う、大きくなったユニバースならではのややこしさになっていますw
今作の監督には我らがタイカ・ワイティティが大抜擢!「シェアハウス・ウィズ・バンパイア」(2014)や「ハント・フォー・ザ・ウィルダーピープル」(2015)も大好きなので、自由なお子様がノリノリで作ったであろう雰囲気が楽しみでした。
ソーは引き続きクリス・ヘムズワースが、そしてアベンジャーズメンバーであるハルクとしてマーク・ラファロも出演。またトム・ヒドルストンもロキとして復帰。
さらに今作には、あの「キャロル」(2015)のケイト様、つまりケイト・ブランシェットが死の女神ヘラとして降臨し、「クリード チャンプを継ぐ男」(2015)のテッサ・トンプソンもMCU入りを果たします。
監督もキャストも大好きなので、期待して観てきた公開初日。
IMAX3Dでの鑑賞には、外国人の方も多く、とにかく終始劇場は笑いに包まれているとても良い映画体験でした。
ラグナロク。それは神々の黄昏。アスガルドの終焉を意味し、全てが終わるそのラグナロクを阻止すべく、ソーは炎の魔人スルトを倒し、破滅の冠を持ち帰る。
故郷アスガルドではロキがオーディンに化けて好き放題遊んでおり、ソーはすぐさまロキを引っつかんで父の元へと行くのだが、オーディンは既に寿命を迎えており、「真に恐ろしい者が帰ってくる。」と言い残し光となって消えてしまう。
そしてその言葉通りに表れたのは、オーディンの隠していた第1子、ソーたちの姉にあたる死の女神ヘラであった。
シリーズ前2作に比べて、今作の異色具合は好みが分かれてしまうかもしれないですが、私は終始爆笑しながら楽しみました。
コメディ色がとにかく全編にわたって強いです。流れとしては、ジェームズ・ガン監督の「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス」(2017)のようですが、しかしここはタイカ・ワイティティ監督のコメディのテイストがしっかりとついていて差別化されている印象でした。
幼稚さと天丼。アホの子の可愛さ。とにかくカッコつけている様が逆にダサく、そして子供の見栄の張り合いのような掛け合いなどずっと笑っていられます。
ロキの扱いもすごくよくわかっているようで、NYCで自分だけしっかりダークスーツで決めちゃったり、「見よ!救世主の登場だ!」と言ってる姿など、恥ずかしい奴っぷりが最高です。
監督自らが声を務めた青い岩男であるカークは、MCU史上最もおもしろい奴かもしれません。あのニュージー訛りの英語とおつむの小学生っぷりも良いです。
起きていることはすごくキャラの根底を揺さぶる事態ばかりですが、この全編を覆う笑いのおかげで暗くはならずにすんでいます。
あ、あと今作のカメオはしっかり観ておかないといけないかと思います。
もちろんスタン・リーじいさんは出ていますけども、マット・デイモンやサム・ニールなども観られますよ!
また、今回は映画そのもののカラーリングも見事でした。
世界の終焉とかいうと、やたらとダークで荒涼としたカラーリング中心になりがちですが、今回はとにかくカラフルです。
それぞれの色分けと言うのもコミックのままの華やかな感覚で、かつ原色としての鮮やかな使い方が印象に残りました。衣装もそうですが、武具まで綺麗。ブルーの刀身とか個人的にすごく好き。
そのカラーリングの鮮やかな部分も、要所ではグッと抑えていたり。
特にヘラ、ヴァルキリー、そして雷神の力を覚醒したソーなど、ここぞと言うところでのスローモーション。また、まさしく神話の絵画のような画づくり。
闇の王国に天をから舞い降りるヴァルキリーの軍勢や、虹の橋にうごめく死の軍団を玉砕する雷神などの構図は、ほとんど静止画として一枚画のカッコよさを持っていて、ここはとにかく美しい。
美しさと言えば、これだけは言いたいですが、ケイト・ブランシェットはスゴイですね。やはり本人が素で女神みたいな人なんで、説得力が段違いだと思います。あの髪を撫でつけるような動きで冠を生成する動きも美しい。
あと、テッサ・トンプソンも白銀のアーマーとブルーのマントがすごく似合ってました。
色使いに画づくりにときて、アクション面でも楽しいのはしっかりしています。
いい意味でゲーム的な感覚を、観ていて持ちました。
最初にヘラがアスガルドに侵攻する場面。次々に兵士を倒していく描写があるのですけども、あの場面がとにかくコーエーの無双シリーズっぽかった。
ばら撒く剣で複数人を同時に倒す様を、少し俯瞰的な視点で見せています。ラストの橋の上でのソーの暴れっぷりも、アクションゲーム的でした。ここでも少し離れた視点が入り、爆心地を意識するような感じです。
目玉となるソーVSハルクも大迫力ですし、レッド・ツェッペリンの”移民の曲”にのせての雷神大暴れは、1つ目は今までと同じムジョルニア大活躍、そして2回目に雷炸裂の神の力で最高に熱いです。
タイカ監督ってアクションの経験は無かったと思いますが、今回はそこでの手腕も見せてくれたと思います。
笑えてカラフルで大迫力。しかし、話の根幹では今まで以上に厳しい状況下の、アイデンティティ問題です。
MCUのアベンジャーズ創設メンバーは、アイアンマンは「アイアンマン3」(2013)で自身の悪夢と対峙し、胸のアークリアクターを失う。そしてキャプテン・アメリカは「シビル・ウォー:キャプテン・アメリカ」(2016)で、友の選択を迫られ、象徴的盾を手放します。
ソーも今作で、彼を象徴し、常に彼とイコールでもあったムジョルニアを失いました。ハンマーなしでは彼は何者か。ただの強いアスガルド人なのか?
そしてブルース・バナー。
彼の体にはブルースとハルクが同居し、今回はハルクがアイデンティティを得て、その間はブルースはいなくなってしまう。それはブルースの死を意味するのか?
ヴァルキリーもアスガルドに失望して自堕落な生活を送っていますね。
そんな自分は何者なのかと言う問いにおいて、危機的状況にある彼らが、自分にできる限りのことをしようとする。
その身に宿る雷神の力。化け物ではなく英雄として力を使う。一度失った誇りを取り戻す。
こう考えてみると、主題のドラマはワイティティ監督が描き出してきた、失ってしまった、傷付いた者たちの寄り添いと疑似家族、再生と癒しでありました。
ユーモアのベールに包んだ、居場所と生きる目的を探すヒーローたちの物語。何しろ純粋に熱く楽しいので、是非劇場で観てください。一応ソーの物語はこれで終わりなのかな?
次はインフィニティ・ウォーという事で、ある意味ホントの総括が来るので楽しみです。
今回はそんな感じで終わりです。それでは、また~
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