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「ブラック・クランズマン」”Blackkklansman”(2018)

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映画レビュー
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「ブラック・クランズマン」(2018)

  • 監督:スパイク・リー
  • 脚本:スパイク・リー、デヴィッド・ラヴィノウィッツ、ケヴィン・ウィルモット、チャーリー・ワクテル
  • 原作:ロン・ストールワース『Black Klansman』
  • 製作:スパイク・リー、ジョーダン・ピール、ショーン・レディック、ショーン・マッキトリック、レイモンド・マンスフィールド
  • 音楽:テレンス・ブランチャード
  • 撮影:チェイス・アーヴィン
  • 編集:バリー・アレクサンダー・ブラウン
  • 出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン、アダム・ドライバー、ローラ・ハリアー、トファー・グレイス、ヤスペル・ペーコネン 他

スパイク・リー監督によるロン・ストールワースの上梓した『Black Klansman』を元にした作品。白人至上主義団体KKKに潜入した黒人警官の実話を描きます。

主演を務めるのは、ジョン・デヴィッド・ワシントン。また彼の相棒となって潜入捜査に当たる警官は「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」のアダム・ドライバーが演じます。

今作はアカデミー賞にて作品賞、監督賞など5部門にノミネートし、脚色賞を受賞しました。

批評筋の評価も高く、個人的にも楽しみにしていた作品ですが、アカデミー賞の発表における「グリーン・ブック」作品賞受賞に関するスパイク・リー監督の辛辣な反応など含めて入魂の1作であることも期待の要因でした。

1979年のコロラドスプリングス警察署にて、警官のロン・ストールワースは白人至上主義団体であるクー・クラックス・クラン(KKK)の支部員募集広告を目にする。

彼はそれまでの記録係の仕事にうんざりし、現場での捜査を求めて、なんとこのKKK支部に直接電話をかけて入団を希望するのであった。

電話の相手が黒人とも知らずKKKはロンに直接会って話がしたいという。

そこでロンは、ユダヤ系白人のフリップを相棒にし、ロンが電話役、フリップは面会役として潜入捜査を始めるのだった。

プロットは実話とは信じられないもので、全体にコメディ要素を効かせているのも納得な、笑ってしまうほど危ない捜査。

絶えずバレるかどうかのスリリングさを持ちながら、KKKらのあまりのアホさにも笑ってしまいました。

「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」でどうしようもないショーンを演じたあの人がまた出てきて、画面に映る度におかしいです。

まず冒頭のアレック・ボールドウィンのヘイトスピーチも超馬鹿げてます。自分の主張すらちゃんと言えないし、ロジックも崩壊している。

その他差別主義者たちの集会やら儀式やら、滑稽すぎておもしろいんです。

しかし、そんな笑いを持たせながら、現実にはこの作品で描かれることは全て笑い事ではないというのが、この作品の根底にある恐怖だったと感じます。

私は今まで少しではありますが映画を観てきました。そこには色々な監督の想いが込められていて、それが真っ直ぐ心に響くことも多くありました。

ただ、この作品ほど怒っている作品は観たことがないのです。

スパイク・リー監督は、映画の中で描かれることが、何も終わっていない、解決なんてしていないと訴えてきます。

上映が終了して、館内が明るくなって、「おもしろかったね。」なんていい気分で帰らせるつもりはありません。

それほど怒っている。もはや我慢の限界を超えているからです。

あまりにふざけた理屈で差別し暴力を振るう残酷な人々がいる。声高に差別と憎悪をまき散らす人間がいる。ロンはフリップと共に、そんなクソ野郎どもをだまくらかし、一発決めてやりました。

でも、あんなに二人が頑張っていたのに、ロンが「潜入捜査官だ。」というのも聞かず、警官は彼を路上に叩き伏せる。あとからやってきた白人のフリップには質問すらせず捜査官だというのを信じるのに。

何も変わってはいないのです。

その失望と何より怒りが監督を突き動かしていると思います。

この作品で描かれる出来事は1979年のこと。数十年前のことです。当時KKKがいて、あんな奴ら誰が相手にする?何もできないだろう。と思っていたら、テロ活動までしていて、デュークのような人間が公共の場で平然と差別発言をしていた。

これは決して、過去の出来事と言えるでしょうか。

皆さんも、「あんなのが当選するわけがない。」「白人至上主義とか、過激なのはもういない。」なんて笑っていたら、どうなったか覚えているでしょう。

過ちを何度も起こしている。

それは初めのフリップのように「俺には関係ないし、そういう人種だとか差別だとかの意識はない。」にもつながる気がします。その無関心が引き起こしたのが、ラストで爆発する私たちの現実です。

先に言ったように、この作品はほんの少しの暖かさと笑いと、それでも失望せざるを得ない差別を描き、そこから絶句する恐怖で締めくくられます。

一切のぬるさがないラスト。

ロンの物語を通して観客に過去の闘いを見せながら、決してそこから距離を取らせることなく、今まさに私たちの問題として、本気で受け止め考えるように突きつけられる事実。

映画を観て、消化してはいけない。いい気分になれる題材じゃない。この差別と偏見の事実と実際に人の命が奪われている現代を描いた作品。

衝撃に絶句してしまうラストを観て、今生きているこの世界の危険と恐怖を改めて感じます。

もちろん好みもありますけれど、アカデミー賞での不満もわかる気がします。本質に目を向けていかなくてはいけません。スパイク・リー監督の怒りの炸裂する傑作。是非劇場で観てほしいですね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。ではまた次の記事で。

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