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「ドライブアウェイ・ドールズ」”Drive-Away Dolls”(2024)

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Drive-Away-Dolls-2024-movie 映画レビュー
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「ドライブアウェイ・ドールズ」(2024)

Drive-Away-Dolls-2024-movie

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作品解説

  • 監督:イーサン・コーエン
  • 製作:イーサン・コーエン、トリシア・クック、ロバート・グラフ、ティム・ビーバン、エリック・フェルナー
  • 脚本:イーサン・コーエン、トリシア・クック
  • 撮影:アリ・ウェグナー
  • 美術:ヨン・オク・リー
  • 衣装:ペギー・シュニツァー
  • 編集:トリシア・クック
  • 音楽:カーター・バーウェル
  • 出演:マーガレット・クアリー、ジェラルディン・ビスワナサン、ビーニー・フェルドスタイン、ビル・キャンプ、ペドロ・パスカル、コールマン・ドミンゴ、マット・デイモン 他

兄のジョエル・コーエンとともに「ファーゴ」や「ノーカントリー」などの名作を手がけてきたイーサン・コーエンが、初めて単独で監督した作品。

ドライブに出たの2人の女性が、謎のスーツケースをめぐって様々な事件に巻き込まれるコメディドラマ。

主人公の2人組のひとりジェイミー役には「マイ・ニューヨーク・ダイアリー」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」で知られるマーガレット・クアリーが、もう一人の主人公マリアン役には「ブロークン・ハート・ギャラリー」や「ハラ」などで主演を務めたジェラルディン・ビスワナサン。

そのほか、「ブックスマート」などのビーニー・フェルドスタイン、「ワンダーウーマン1984」のペドロ・パスカル、「オデッセイ」などのマット・デイモンらが共演しています。

イーサン・コーエン単独の監督作。兄妹が初めて、どちらか片方だけで作品を撮るってことで興味がありました。あとイーサンの奥さんトリシアが脚本を担当。

興味深いですが、トリシアはクィアでレズビアンと公言し。二人は結婚していますが、どちらにも別のパートナーがいてみんなで一緒に住んでるとか。30年結婚しているけど、妻がレズビアンで夫がストレートってすごく信頼とか人間性で一緒にいるんだって分かります。

「ドライブアウェイ・ドールズ」の公式サイトはこちら

~あらすじ~

Drive-Away-Dolls-2024-movie

日々の生活に行き詰まりを感じたジェイミーとマリアンは、車の配送(ドライブアウェイ)をしながらアメリカ縦断のドライブに出かける。

しかし、配送会社が手配した車のトランクに謎のスーツケースを発見し、その中に思いもよらない物が入っていたことから、スーツケースを取り戻そうとするギャングたちに追われることに。

さらに、ジェイミーの元カノである警察官や上院議員までも巻き込まれ、事態は予想外の方向へと展開していく。

感想レビュー/考察

Drive-Away-Dolls-2024-movie

気の抜けたB級映画

コーエン兄弟の弟イーサンの初単独監督作品。コーエン兄弟のファンが多くいると思いますが、こうして初めて一人だけで監督するってなんだか新鮮。

コーエン兄弟といえば愚かさに美徳を見出すような、アホだけど愛しい感じがあると思います。

「ビッグ・リボウスキ」とか「ファーゴ」の二人組とかね。全体のセリフ回しも印象的だしキャラがいい意味で独特。

また彼らは「ノーカントリー」のような至極シリアスなアメリカ社会の寓話なんてのも描きます。

さて、そこで今作はどちらの立ち位置かと。強いて言うなら前者です。ただ、愚かさに美徳を見いだせるかが人によって絶対異なると思います。

見る人にとってはただのバカな登場人物にしか映らないかもしれません。

今作は熟練のコーエン兄弟テイストではなくて、もっとエッジが効いてて奇抜で滑稽なのです。初期作品のような。

知らずに観ると独特なテイストを持った新人監督の荒削りな破天荒さを感じます。

なのでいったん、コーエン兄弟的な期待は置いておいたほうが良い。もっとゆるくて気軽でおバカな映画だと思って臨んでみましょう。

原作から映画化へ

ちなみに、今作はイーサン・コーエンの奥さんであるトリシア・クックが2000年に出会った原作をなんとか映画化しようと長年温めていたもののようです。

オリジナルタイトルは”Drive-Away Dykes”(これはエンドロール時にちらりと見えます)ですが、配給のFocus Featuresは気に入ったと言いながらも、MAPPの審査の関係でタイトルはやや変更せざるを得なかったとか。

元のタイトルだと”Dykes”はレズビアンの蔑称というか良くない言い方ですし。脚本面に関してもトリシア・クックが結構変更を入れているのですね。

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レズビアン映画としての珍しいスタイル

この映画のアホさと下品さは、ちょうど年明けにアマプラで観た「ボトムス 最低で最強な私たち」に似てる気がします。

まあとにかくね、レズビアンコミュニティ全力投球一極集中で、アソコの話にセックスにディルドーに下ネタがスゴイです。

主人公は初登場時にクンニしてるマーガレット・クアリー演じるジェイミーと、お堅くて真面目な、ジェラルディン・ヴィスワナサン演じるマリアン。

この二人の珍道中。そこにさらに強烈キャラでジェイミーの元カノを演じるビーニー・フェルドスタイン。(カップルが別れるときの描写が壁に取り付けたディルドーを取り外すというトンデモ映画です)

実際のところ、映画界においてはなかなか露出の少ないレズビアンを主軸にした映画でありつつも、しかしそのジャンルに多い悲劇的な話ではない珍しい映画です。

レズビアンであることが重要でありながら、突き抜けたギャグなどがそれを自然な要素にしてくれています。

存在は認知しながらも変な気を遣わずにサラッとしている。それが妙に好きになってしまう

素晴らしい監督と俳優とクルーが全力で作った悪ふざけ映画

コールマン・ドミンゴが紳士的なボス、そして今どき珍しいデコボコ下っ端コンビまでいます。

さすがイーサン・コーエンという看板もあるからか、無駄に俳優陣は豪華で、ドライブアウェイサービスの店長はビル・キャンプだし、序盤に殺されてしまう頭部のみ出演ばかりの男はペドロ・パスカル。

重要な市長の役にはマット・デイモン。あとサイケデリックイメージの中で男性のイチモツを石膏で型取りするというぶっ飛んだ女をあのマイリー・サイラスが演じています。

カメオ的な意味合いが強いでしょうけど、短い出演時間の中に知ってる顔がいるのです。

スタッフメンバーも、音楽は「キャロル」などのカーター・バーウェルが担当してるし、撮影は「Zola ゾラ」だったり「パワー・オブ・ザ・ドッグ」などのアリ・ウェグナー。

なので結構豪華な俳優陣とスタッフが集結して、リッチな悪ふざけをしてるような贅沢なジャンキーさが味わえました。

Drive-Away-Dolls-2024-movie

70年代みたいなスワイプ場面転換とか、サイケデリックイメージの挿入パートとかがほんとにふざけてますが、根幹のストーリーははっちゃけてる女の子と、堅実な女の子がお互いに近づいていくロマンスです。

あまりに下ネタも激しいしドタバタコメディになってますけれど、旅を共にして徐々に友達から大切な人になっていくドラマ。

お互いを知って愛を肯定した2人の女性

車には”Love is a sleigh ride to HELL”「愛は地獄へ向かうソリ」と書き込んだジェイミー。序盤に恋人との別れを迎えて、浮気癖がすごくてとにかくすぐに女の子をゲットしてベッドインしたい彼女は、愛に真剣ではない。

それに対して数年はセックスしてないという、3Pのお誘いも断って本を読むお堅いマリアン(3Pを受け入れるべきかは議論の余地あり)。

彼女たちの変化に富んだ旅。ジェミーの奔放さは抑えられて、性の解放とはまた違うセックスを。レズビアンバーでパーティに誘われたとき、これまで一人でも突っ走ってた彼女が断る。

マリアンはジェイミーとシャワーを浴びて、自分から市長のアレを使いたいという積極性をみせたり。

2人の関係が変わって、最後は車に書かれた文字も”Love is a sleigh ride so HERE GOES!”「愛はそり、いざ出発!」になりました。

運転手がジェイミーだったのが、おばさんとあって最後に運転するのはマリアンになるとか、その辺も互いに互いを理解したからこその入れ替わりに思えて良いですね。

政治や時代背景的な興味深さも

ちなみに政治的な面で観てみても面白いかもしれません。作品の舞台は1999年でまさに世紀末。

アメリカではクリントン政権の中道的な方針がありつつそれがちょうど終わりを迎える時期です。保守派がここからさらに復活を遂げていき、同性愛者たちは苦しい局面を迎えたのかと。

バイブルベルト(聖書を字義どおりに信じる正統派キリスト教徒の優勢な地域)を通っていくことに、マリアンも懸念してしますが、最終的におばさんにゲイだということを言いながら、さらにジェイミーがカップルだと告げる。

その意味では、レズビアンの反抗的な凱旋と新時代への叫びにも捉えることができますね。

まあとにかく深く考えずに下品で気楽でクレイジーなドライブを楽しむ作品です。バカバカしいとかウェルメイドではないとか言われるのは分かりますが、個人的には嫌いになれず癖になる作品でした。

今回の感想はここまで。ではまた。

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