「Zola ゾラ」”Zola”(2020)

「Zola ゾラ」(2020)

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作品概要

  • 監督:ジャニクザ・ブラヴォー
  • 脚本:ジャニクザ・ブラヴォー、ジェレミー・O・ハリス
  • 原作:アザイア・キングによる一連のtweet投稿、デヴィッド・クシュナー「Zola Tells All: The Real Story Behind the Greatest Stripper Saga Ever Tweeted」
  • 製作:カーラ・ベイカー、デイヴ・フランコ、エリザベス・ハガード、ダビド・イノホサ、ヴィンス・ジョリヴェット、クリスティーン・ヴェイコン、ジア・ウォルシュ
  • 製作総指揮:アザイア・キング、デヴィッド・クシュナー、ジェニファー・コノワル
  • 音楽:ミカ・レヴィ
  • 撮影:アリ・ワグナー
  • 編集:ジョイ・マクミロン
  • 出演:テイラー・ペイジ、ライリー・キーオ、ニコラス・ブラウン、コールマン・ドミンゴ 他

「Lemon」(2017)ほか多くの短編、そしてTVシリーズの監督をしたジャニクザ・ブラヴォー長編第2作品目となる作品。

アザイア・キングによる2015年のツイッターへの148の連続投稿で語られた体験を、長編映画化したものです。

主演は「マ・レイニーのブラックボトム」などのテイラー・ペイジ、そしてゾラを旅へ誘う女性を「ラブソングに乾杯」などのライリー・キーオが演じています。

その他、ニコラス・ブラウン、コールマン・ドミンゴらが出演。個人的には楽しみだったのが作曲が「ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命」のミカ・レヴィということ。

作品の企画は2015年のツイートが何百万という人に閲覧され注目されて割とすぐだったようですね。しかしいろいろと製作が難航して、実際に撮影が開始したのは2018年ころだったとか。

2020年のサンダンス映画祭でプレミア公開されたのですが、その直後に新型コロナウイルスの感染拡大があったため一般公開は延期、2021年になってからの公開になりました。

日本公開は例によって海外に比べて遅いのですが、2022年8月になってとりあえず公開してくれただけでも良いですね。

しかしちょっと公開規模が小さいことと、夏休みシーズンで他の作品に推されていたので回数が少なかったです。

平日のレイトショーでぎりぎり観てきました。もう逃せば見れなくなりそうなくらい縮小が早かったからか、夜遅い回でも割と人が入っていました。

「Zola ゾラ」公式サイトはこちら

Zolaのtweetが画像化されてそのまま読めるのでこちら紹介しておきます。

DDW CHECK OUT THE FULL ‘ZOLA’ TWITTER THREAD AHEAD OF ‘JAW-DROPPING’ NEW MOVIE MAY 7, 2021

~あらすじ~

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アメリカのデトロイト。フーターズで働くダンサー/ストリッパーのゾラは客の一人ステファニと仲良くなる。

互いのSNSアカウントで繋がり、連絡を取り合っていたところ、ステファニからフロリダへの旅を提案される。現地のクラブでダンスする仕事があるから一緒に稼がないかという誘いだった。

知り合ったばかりではあるが、大きく稼げるチャンスと思ったゾラはステファニとの旅に出ることに。そこにはステファニの彼氏デレクとルームメイトという謎の男が一緒にいた。

デレクをモーテルに置いてきた後、二人でクラブで踊るのだが、その後別の仕事があった。ホテルに向かえと言われそしてそこには知らない男が来る。

実は稼ぐというのは売春行為をしてということで、謎の男はステファニのポン引き、今回はゾラにも売春させて稼ごうとしていたのだ。

しかしゾラは頑なに断り躱し、さらにそのお粗末なビジネスの改善をして大金を稼いでしまう。

だがそれはこの度から抜け出す道を狭めてしまうことになるのだった。

感想/レビュー

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This is America

ジャニクザ監督が連続した投稿から紐解き露わにしたのは、アメリカという国そのものと言っていいでしょう。

そもそも今作は現代における自己顕示欲、承認欲求の代表であるSNSの投稿をもとにしていてそれがなければ生まれることもなかった作品です。

原作に沿って、今作はミカ・レヴィのスコアによってSNS投稿の、またはスマホの通知音のような音楽で包まれています。

何から何まで公開していくパーソナルな空間の取り払いはアメリカに限ってはいませんが、投稿する行為が今作の展開にも何度も出てきます。

売春行為から、バカ動画まで、この小さなスマホから拡散していくうねりの奇妙さはおもしろい。

金、暴力、セックスにドラッグ、そして警官の暴力からきらびやかに思えるリゾートやホテルに、人種のるつぼ。これは非常にアメリカンな映画なのです。

飲み込んでいくエネルギー

さて、作品には独特の波長とエネルギーがあります。

実は特に最初の20分くらいに関してはそのトーンと合わせることができずに風変わりさは好きだけど乗り切れずにいました。

ただ、今作はいい意味で自分を曲げません。エネルギッシュさは衰えることなく、人物が増えていくごとに、旅が混迷を極めていくほどに楽しくなっていきます。

気づけば完全に飲み込まれていて、中盤以降ずっと楽しいライドになっていました。

通知音的な音響作曲も次第にクセになって行きましたし、行き着く先が見えるようで見えないところも楽しい。

各キャラクラーの個性も強いし絶妙に心配の種なりつつもまあどうなっても自業自得かなと思える距離感が好きでした。

このライドを楽しめるか否かが分かれ目とは思います。

万人に受けようという穏やかさよりも、個性、我の強い作品です。

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ミカ・レヴィの音楽

何度も言いますがこれが素晴らしい作用だったと思います。

ときに非常に馬鹿らしい頭空っぽな空気を出しつつ、スリラーともホラーとも言える転調も見せていて、ゾラのスレッドへのめり込む感覚が強められていました。

実際の通知音なのかスコアなのか不明瞭で境界線を取り払っていたり。

”Florida Muder”とか、ふわふわした夢のような感覚はアメリカンドリームと綺羅びやかな世界のようで、しかし絶妙に外したところでのチャイムとか、不協和音がその裏側の闇を示すようです。

クセになります。

映画的な語りの美しさ

また今作は一見すればSNS切り取り型の、iPhoneで撮りましたみたいな印象を受けるんですが、非常に映像や画面構成と音が雄弁に語る映画的な作品と思いました。

画面の細部というか広がりの中で起こることが重要だったりするからです。

鏡に反射し映っていくゾラとステファニの画。

反射はその後に控室で見せられ、そこでその状況を表すようにステファニと彼女の反射がゾラを挟み込んでいます。

この時点でゾラが抜け出せない沼に入っていると画面で示しているんですね。

またモーテルでは上の階の廊下でバスケをする少年たちのドリブル音がビートになりつつも、今はもう引き返せない状況、止まらず進んでいくような示唆を含んでいたり。

陽の光を遮って、Xがゾラの前に立つシーンは、まさに彼がゾラの現実に影を落とす存在としてのメタファー。

ホテルでの売春シーンにおいてもドアのこちらと向こう、背を向けるゾラと焦点は合わなくとも手前で行われる行為などが配置されます。

常にセンターは主人公ゾラに置きながら、意識すべき対象物を置いて、恐怖と不安や居心地の悪さなど心情の語りがなされていました。

時折画面に向かって普通に話しかけてくるゾラは配信画面を見ているような遊びが見られます。

またステファニーの視点で語られるなんとも恥ずかしく笑っちゃうモンタージュですが、実はそれ自体が映像の連なりから、その語りとの齟齬なんか含めて映画的だなと思ったり。

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「アメリカン・ハニー」のクリスタル役では底辺にいるカリスマビッチっぷりが素晴らしかったライリー・キーオが今作では頭弱い系ビッチを見事演じ、彼氏役のニコラス・ブラウンももうダメダメな男で最高。

バカ動画を永遠見ながら、一人全体像がみえていない可哀想な感じが可愛くも、ステファニとのこカップルの合図の絶妙なダサさもあり嫌いになれません。

コールマン・ドミンゴもナチュラルなカリスマを出しながら、要所でバカを発揮するのです。

アベグンデ・オラワレってどこの国の人?って感じですが、売春の客然り沈黙の女然り、人種の多様性はアメリカらしい。

混沌の国で強く生きる

ゾラの語りから見えるアメリカという国のカオス。

華やかに見えながらも、滑稽で幼稚、そして闇が深い。

ただその中でか弱い少女ではなくビジネスウーマンとして強さを維持するゾラ。

ビジネスウーマンとして進言し稼ぎ出すところはコメディであり、ゾラの強さと才能が見えます。

また状況として抜け出せなくなっていたとしても、そこかしこにある罠にゾラは気づいています。

どこまで行っても彼女自身は犯罪を行わず、そこにいるだけで結局売春もしない。

ステファニの件でアベグンデに彼女を守るはずだと問い詰められたとき、すぐさま「じゃあ私の護衛は誰なの?」と答える気丈さがあります。

テイラー・ペイジの”What the f*ck?”なリアクションもおもしろく、一人だけシラフで状況を眺める俯瞰視点を観客にもくれています。

彼女のダンサーとしての力が初めに示される序盤。

テイラー自身、実際にストリップクラブに勉強のためもぐりこんで、ダンスもしたしストリップもしたらしいですが、経験が生きたのかパフォーマンスがすごいんですよね。

他人から取る(盗る)ことばかりの登場人物の中で唯一、ゾラだけは努力のシーンがあります。

家のポールでダンスの練習をするシーンです。

なので、ゾラがしっかりダンスで稼げるという事実に説得力があり、だからこそ彼女に売春も犯罪も必要ないところに確信が生まれます。

黒人文化の盗用的な話し方をして、ズブズブと沼にハマっている白人女性に対し、アフリカンアメリカンの女性は芯があって真っ当というのも含みのある設定ですね。

奇妙なユーモアとライド感、波長をもった作品ながらじっと見ればすごく映画的かつアメリカ凝縮映画。

各役者も光っていますし、撮影や音楽なども楽しめる作品でした。

ちょっと公開さ入れている規模が小さいのですが、機会があればスクリーンで見てほしい作品です。

ということで今回の感想は以上。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

ではまた。

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