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「ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒」”Missing Link”(2019)

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「ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒」(2019)

  • 監督:クリス・バトラー
  • 脚本:クリス・バトラー
  • 製作:トラヴィス・ナイト、アリアンヌ・サトナー
  • 音楽:カーター・バーウェル
  • 撮影:クリス・ピーターソン
  • 編集:スティーヴン・パーキンス
  • 出演:ヒュー・ジャックマン、ゾーイ・サルダナ、ザック・ガリフィアナキス、エマ・トンプソン、ティモシー・オリファント、スティーヴン・フライ 他

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世界に名だたるストップモーションアニメ制作会社ライカが贈る最新作。

未知の生物を探し求める探検家と、彼の協力を得て仲間を探そうとするビッグフットの冒険を描きます。

監督は同スタジオの「パラノーマン ブライス・ホローの謎」などのクリス・バトラー。

声の出演はヒュー・ジャックマン、ザック・ガリフィアナキス、ゾーイ・サルダナら。

今作はスタジオライカの5作品目となるもので、ライカも15周年とのこと。作品評かは非常に高く、実は興行的には大失敗らしいですが、ゴールデングローブのアニメーション賞を受賞しました。

また先日のTIFFでも特別招待作品として上映されていました。

公開週末に行ったのですが、回数はそこそこやっていましたが人の入りはまちまち。今は鬼滅の刃への動員がすさまじいようですね。

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未確認生物を探し求めるライオネル卿は、失敗続きで、なかなか成果を上げられないでいた。

様々な探検家が集う、会員制クラブにも参加できず、クラブを率いているダンスビー卿にもバカにされている。

ある日、ライオネルのもとにビッグフットの目撃情報が届き、今度こそ証拠を掴むと決意したライオネルは、ダンスビーにビッグフットの存在を証明すればクラブに入れるよう約束させる。

しかし実際に現地についたライオネルを待っていたのは、人語を理解し話せるビッグフットであり、実はライオネルに仲間探しを手伝ってもらうために呼んだのだという。

ライオネルはミスター・リンクと呼ぶことにしたビッグフットとと、彼の仲間がいるであろうヒマラヤへと旅立つが、ライオネルを疎ましく思っていたダンスビーの放つ刺客が迫っていた。

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これまで「コララインとボタンの魔女」から「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」を見てきた方にとっては、もはやスタジオライカのクレイストップモーションアニメのレベルは理解されていると思います。

今作は前作KUBOからさらに、クレイアニメとCG生成された世界と境界線が薄くなっています。

非常に緻密な背景すら、プラクティカルな物質だったり、細やかな動きの他にも、世界が躍動する様を楽しめます。

特に世界中を冒険することが作品の根幹にありますから、いろいろな舞台を見れるのは当然ですが、今作の喜びは、その繋がりにあるのかと感じました。

これまではファンタジーな世界であったことが多いライカの世界が、ここで私たちの住む地球になったのです。

映画を眺めている私たちの住むこちらと繋がってくれるのは、アニメの中の不可思議さがこっちにも存在してると思わせてくれて素敵です。

そしてこれまでと異なるのはもう1つ。アクセスのしやすさでしょうか。

ボタンの魔女、月の帝。

これまではアニメ作品としてはホラー的な要素が強く、子どもの悪夢を生成するようなカラーを持っていたライカ。

しかし今作は明るく鮮やかで陽気な作品になっていますね。

色彩の豊かさなどもありますが、ここは全体のトーン、そのなかで生きるキャラクターたちの魅力があります。

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ヒュー・ジャックマン演じるライオネル卿。

彼の登場であるはじめのシーンから、作品の明るさが定義付けられましたが、その人物の掘り下げと根幹にある優しさも提示されたように思えます。

彼はまあ自己中で、能力はあるけれど、やや他人を見下しがち。

そしてとにかく正義の探検家というには嘘をついたりごまかしたり。

軽薄さが若干「グレイテスト・ショーマン」ぽいですね。

でも大事に思えるのは、他の”偉大な探検家”と異なり、その知的好奇心には支配欲がなくまた破壊を伴っていないのです。

現実においても、またフィクショナルな世界でも、これまでの探検家とは侵略者であり破壊者であったことが多く感じます。

古代の遺跡に入れば崩壊させ、土地の民族と戦い、宝物を動物含めてトロフィーとして持ち帰る。

もちろん映画ではそれらがスリリングな要素でありますが、現実ではダンスビーらのようにただただスポーツとして種を狩り、飾られた歴史とするために文明を終わらせる残酷さがあるんです。

だから、ライオネルがミスター・リンクを殺して持ち帰ることなどせず、仲間との合流の旅を助けるのはすごく素敵だと思います。

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そしてミスター・リンク。

今作でももっとも可愛らしく、そしてスラップスティックさと台詞の外しで笑わせてくれるキャラクターです。

衣服、変装から言葉の比喩が分からないところまですごく楽しいと同時に、一番分かりやすい孤独を感じています。

最後の一人であること。誰もいないこと。

結構切ないことを、自虐的にネタとして繰り出すとき、ふとすごく悲しくなりますね。

今作はその属さないことがテーマにある気がします。

なんとかクラブ会員になろうとするライオネルと、イエティの仲間入りを目指すリンク。

そこに、夫を失ったことで浮いた存在になってしまっているアデリーナまで加わり、自分の居場所を探します。

ただ旅の先に、自分自身を捨てなければ属せないグループがあったとき、今作は自己を自己で定義し受け入れることを選びます。

自分で名前を選び、ライオネルはそれを尊重する。

氷の橋の上で友と呼ぶライオネルのシーンは白眉です。権威に取り入ろうともがくことを捨てて、自分を進化させる。本当の進化論。

侵略も破壊もしない真の探検家と、自分で世界を築き上げる相棒。

最後の一連のアクション、3人が文字通りに繋がっている状態で繰り広げられるとか、見事すぎる。

冒頭の湖、酒場の乱闘や西部劇的な銃撃に船内の奥行きすさまじいアクション。

これがストップモーションアニメと思えない完成度と圧倒的な空間センスも楽しめ、またひとつスタジオライカから傑作が生まれたと思います。

とにかくこれまでのダークさが抑えられていて見易くなっていますし、コメディよりなのもアクセスがいい。

ダイナミックな背景を持つ意味で も、是非劇場でご鑑賞を。

今回の感想はこのくらいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

それではまた。

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