「バンブルビー」(2018)
- 監督:トラビス・ナイト
- 脚本:クリスティーナ・ハドソン
- 原作:タカラトミー・ハズブロ 『トランスフォーマー』
- 製作:マイケル・ベイ、スティーブン・スピルバーグ
- 音楽:ダリオ・マリアネッリ
- 撮影:エンリケ・シャディアック
- 編集:ポール・ルベル
- 衣装:デイナ・ピンク
- 出演:ヘイリー・スタインフェルド、ジョン・シナ、ジョージ・レンテボーグ・Jr、ジョン・オーティス、レン・キャリオー、アンジェラ・バセット 他
実写トランスフォーマーシリーズにて人気のバンブルビーが、自身単独のスピンオフとして展開された作品。
今回は本シリーズを務めてきたマイケル・ベイではなく、「KUBO 二本の弦の秘密」のトラビス・ナイトが監督しています。
主演を務めるのは「スイート17モンスター」などの注目女優ヘイリー・スタインフェルド。またジョン・シナがトランスフォーマーたちを狙う軍人役でも出演。
初めてTF映画がベイじゃないという新鮮味と、あのトラビス・ナイトという期待。しかも主演がヘイリーときたわけで、本当に楽しみにしていました。
先行には行きませんでしたけど、公開してすぐ週末に鑑賞。若い観客が多めで、結構バンブルビーのかわいさに惹かれてきた方が多かったですね。
遠い惑星サイバトロンでの戦争で、自由のために戦うオートボットは苦戦を強いられていた。
若き戦士であるB-127は司令官であるオプティマス・プライムの指示で、遠い地球に一時避難することになるのだが、追手との戦闘で声帯回路とメモリー情報を破壊されてしまう。
そんな時、車いじりが好きな少女チャーリーは、行きつけのスクラップ場で古ぼけた黄色いビートルを見つけ、頼み込んで譲り受けることに。
家に帰り整備をしようとすると、それは擬態していたB-127であった。孤独に怯えている彼をチャーリーは”バンブルビー”と名付け、共に過ごすことになる。
しかし、サイバトロン星からオートボットの残党を狩り、オプティマス・プライムの所在をつかもうと、悪のディセプティコンが迫っていた。
監督がトラビス・ナイトという時点で分かっていたことですけれど、綺麗にまとまっていて、青春とロボットと少女の友情が楽しめる愛らしい作品でした。
いままでのマイケル・ベイによるトランスフォーマーシリーズが、とても作家性というか特徴的な作品でしたので、あちらのテイストを期待していると物足りないとは思います。
しかし、一般的にトランスフォーマー映画に心底がっかりしていた方であれば、今作は気に入っていただけるかと。(私はベイはベイで頭のおかしいスタイルが好きですけど)
よく気にされるのは、今作は本シリーズを見ていないとわからないかという点ですが、実際のところ今作だけ見ても大丈夫です。
ちょっとした小ネタだけ知りたいなという場合には、第1作目「トランスフォーマー」を見ると少し楽しいでしょうけれど、今作を観てからでもいいですね。
トランスフォーマーネタに関しては冒頭サイバトロン星からアニメデザインの司令官やラチェット、ホイルジャックの登場、参謀たちの活躍などファンには嬉しいものの連続。
「ディセプティコン」って”騙すもの”って意味だろ?という突っ込みが作品内でされるのは笑いました。
でもそういうファンサービスはしすぎず、子供向けのSFアクション映画として全体を締めているのは良かったと思います。
映像表現に関しては、もう当たり前の領域に入っている時代なので、CGの完成度は言うまでもなく高いです。もう白昼での変形に関しても、フレアとかのごまかしなど必要なくリアルさを出せています。
しかし、同時に見せ方という点では今作はしっかり、惜しみないサービスをしていると感じました。
変形シーンも本当に多く、その速さも様々であり、一部分の変形での見せ場もあります。
また非常にテンポよく展開されていくストーリーの中で、アクションも満載。その殺陣も見やすいですし、ナイトシーンでの戦いなど含めてどこで何をしているのかが、その迫力を損なうことなく表現されていました。
戦闘における近接格闘の動きとか、結構複雑な動きですが見やすかったですね。
丸みを帯びたバンブルビーの造形もかわいらしく、スラップスティックなコメディにも笑えます。
高いレベルでの映像表現にプラスして、主演のヘイリー・スタインフェルドの演技が、チャーリーとバンブルビーという孤独な二人の結びつけをとても真実味があり暖かいものにしてくれていると感じます。
「スイート17モンスター」でも非常にうっぷんのたまった10代を見事に演じていた彼女ですが、誰にも理解されない寂しさを抱えているチャーリーを素敵に演じていました。彼女の心情が理解できるから、人間パートも退屈ではありませんでした。
チャーリーは父を失った悲しみから、彼を思い出してしまう高飛び込みをやめました。
中盤でも崖から飛ぶことができなかった彼女が、最後にバンブルビーのために飛び込むシーンが見事で感動的です。
そしてバンブルビーは、一度は記憶を失い戦うことをやめていましたが、チャーリーのために立ち上がるのです。
この自分の人生、生きる目的を失っていた二人が、互いのためにもう一度生きることを決意する。
エンディングソングはヘイリー自身が歌う”Back to Life”。あなたが私を生き返らせてくれた。
文字通りチャーリーはバンブルビーを蘇生しますが、彼と出会い勇気をもらったことでチャーリーもまた生き返ったのだと思います。
お互いに生きる道を見つけた二人は、やはり一緒にはいられません。
そこには大切な友人と出会い分かれていく青春の切なさがありますが、自分を強くしてくれた相手を、決して忘れることはないでしょう。
全体の規模を小さく納めながら、アクションや変形はたっぷり入れ込み、王道の異種間友情と青春物語に仕上げて見せた今作。
子供たちのオモチャの実写映画として素敵で、「アイアン・ジャイアント」的などこかノスタルジーもある愛しい作品になっていました。
そういえば、クボに続いて今作でも、死んだ父への想いをもつ人物が主人公ですね。
大切に思っているけど別世界にいる父。監督の個人的な想いがあるのかなあと勘ぐってみたり。
今回はこのくらいで感想はおしまいです。それではまた。
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