「ラブソングに乾杯」”Lovesong”(2016)

「ラブソングに乾杯」(2016)

  • 監督:ソー・ヨン・キム
  • 脚本:ソー・ヨン・キム、ブラッドリー・ラスト・グレイ
  • 製作:アレックス・リップシュルツ、ブラッドリー・ラスト・グレイ、デビッド・ハンセン、ジョニー・マック
  • 音楽:ヨハン・ヨハンソン
  • 撮影:カット・ウェスターゴー、ガイ・ゴッドフリー
  • 編集:ブラッドリー・ラスト・グレイ、ソー・ヨン・キム
  • 出演:ライリー・キーオ、ジェナ・マローン、ライアン・エッゴールド、ロザンナ・アークエット、キャリー・ジョージ・フクナガ、エイミー・サイメッツ、ブルックリン・デッカー 他

作品概要

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「For Ellen」などインディ映画を手掛け、最近はTVシリーズの監督をしているソー・ヨン・キムによる二人の女性の友情を描いたドラマ映画。

主演は「マッドマックス 怒りのデス・ロード」で妻たちの一人であるケイパブルを演じたライリー・キーオとニコラス・ウェンディング・レフンの「ネオン・デーモン」などのジェナ・マローンが努めます。

サンダンスでのプレミア公開を経て北米公開。インディペンデント・スピリット賞ではジョン・カサヴェテス賞にノミネートと高評価。

日本での劇場公開はなくて、ずっと観たかったんですが海外版のDVDかアメリカアマプラでしか見られず困っていました。17年にネットフリックスにて配信。

ただずっと加入してなくて。

今回ついに加入したので早速の鑑賞です。

~あらすじ~

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単身赴任する夫と離れ、独り子育てをしているサラ。

孤独と育児の疲れがサラにのし掛かり憂鬱な日々が続くなかで、ある日サラの親友であるミンディが訪ねてきた。

再会を楽しみ、何よりミンディのおかげで、サラの塞ぎこんだ日々に少しだけ楽しさが取り戻された。

ロデオを見たり遊園地に行ったり、久しぶりに酔っぱらう。

そしてその夜、サラとミンディは友達以上に親密な関係になった。

ただ、ミンディは仕事が入ったといい、急にサラの元を去ってしまう。

それから3年の時が流れた。

感想/レビュー

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深く人間としてつながる女性2人のドラマ

ソー・ヨン・キム監督の作品は初めての観賞になりましたが、非常に美しくそして確かな存在として女性を描く監督だと思います。

この作品はある二人の女性の愛し合う関係性を、性的ではなく役割としてでもなく、非常に深い人間としての繋がりと絆として見せています。

ただただその自然さには、映画であるということすら忘れさせる圧倒的さがあり、そしてこの作品に流れる時間は私のものになり、この作品が私の想い出になっていく。

その場にいてすべて見て、聞いて、そして感じた。

だからこそそれらをすべて自分の記憶のように大切に心に留めておくことができる。

そんな、自分の中に流れ込んでくる作品でした。

インディ映画らしい静かな感じはあるんですが、もちろん主演二人にはいい具合に華があります。

でも、着飾ったり誇張したりせずにとにかく静かな演技があり、あまりに自然すぎてサラとミンディは実在の人物に思えてきます。

この作品はサラとミンディの愛情と友情を主軸に、女性映画を貫きます。

フェミニズムという枠でもあるのかもしれないのですが、自分としては女性同士の繋がりを、ウーマンスと呼ばれるジャンルで描いていると思います。

なので性的な要素はあっても強くはなく(実際にセックスのシーンはない)レズビアンの映画というわけではないと思いますし、「テルマ&ルイーズ」とかに近いものなのかもしれません。

サラは結婚している、そしてミンディは作中で結婚する。

ただ、そうした婚姻とかよりももっと深い人間としての繋がりを二人には感じ取れ、それこそが純粋に心地よくまた切なくて愛しいのです。

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赤裸々に描かれる女性

この二人をとらえる撮影がすごく好きです。長回しの部分もあったり、マジックアワーの中の不思議な空間を、空気を、そのまま届けてくれる。

撮影監督はカット・ウェスターゴーとガイ・ゴッドフリー二人でそれぞれが前半部と後半部を担当しているんですが、どちらも美しい。

あまり作りこんだ感じがしない、すごく自然で、日常のふとした瞬間に周囲に現れる美しさがあります。

さらに描写についても。

今作では徹底して男性的な視点が排除されているのだと感じます。だからこそサラもミンディも、二人や女性たちの会話もすべてが自然に見え、生きていることがより強く見えるのです。

それはサラがジェシーの世話をするところからも見て取れますね。あの子育ての絶妙な感じ。

まずもって子どもの世話が完璧ではない、乳母とか保母的な描き方をしていないところは本当に素晴らしいでしょう。

女性に対して役割的にそうした目線を持っていると、どうしてもそのあたりは素晴らしい”母親”でしか描かれないんですが、サラはすごく手こずっている。

だってしょうがない。一人の人間なのですから。

女だから子どもの世話が上手い。そんなわけないじゃないですか。

ただより多く接する(男性の不関与)からそう見えるだけで、やはり言うことを聞かないことにイライラするし、急に起こされたり目が離せなかったりすごく疲れる。

ジェシーの子役もすっごくいい具合に、リアルにコントロールできない感じがあって、だからサラが疲れるのもわかる。甘やかせないけど、言うこと聞けば収まる。でもそれだと叫べば通ると覚えてしまう。

しかもサラは独り。そこにミンディがいてくれることでほんの少しだけだけど、サラ自身でいることができたんでしょう。

ミンディは車の運転を代わってくれて、ジェシーを代わりに背負ってくれた。重くのしかかるものを一時でも持ってくれたり、優しい言葉も励ましもくれ、そしてよくやっているとほめてくれる。

ミンディがどれだけサラにとって救いか。

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回る遊具の浮き沈みに共に乗って

ミンディと過ごしていくサラ、そこでの二人とか、また独身パーティの描写とか、女性が自然体なのも素敵です。

いわゆる下ネタ全開トーク。夫婦間のセックスとか、若いころにやったバカな話とか。ストリッパーを呼んでのシーンもそうです。

「男とペニスに乾杯」

おしとやかさを押し付けず、下ネタは男が言うものだということもなく。こういうところが実際に生きている女性たちの感覚を強めていると思います。

サラとミンディ二人がただ互いを見つめあう。二人だけで過ごす。

物言わない眼差しから、全てが分かる。ライリー・キーオもジェナ・マローンも本当に素晴らしかった。

運転席を入れ換えて車内でとらえられる相手を見つめるシーン。

ミンディが帰ってしまう際にも、結婚式でも、映るのは見ているサラです。

何も言わないけれど、寂しげで、でも応援もしている。

そしてミンディは遊園地で心配そうにサラを見つめる。

抱え込み続けたサラが文字通り叫ぶことができたのは、ミンディがいてくれるからでしょう。

くるくると回る観覧車。

上に行っても下に落ちても、浮き沈みを共にして。

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互いを愛した2人のウーマンス

結婚の行く末の最悪を経験しているサラが見つめるミンディの結婚式。愛する大切な人。幸せを願いながらも、もしもあの時・・・を考えずにはいられない。

ミンディは母と確執がありました。でも母はずっとミンディの幸せを願っています。

背景こそ語られなくても、あのシーンだけで隔たれながらもお互いに大切に思い合う母と娘を見て取れます。

そしてサラは最後にジェシーと額を合わせる。将来ジェシーも大切な人ができるでしょう。男性でも女性でもいい。ただその人と一緒になれることをサラは願うはずです。

もしかしたら、自分のように破綻するかもしれないけれど、ただただジェシーに幸せになってほしい。ここにもまた母と娘がいるのです。

女性同士が持つ深いつながり、連帯をすごく自然に真っすぐとした目線で描いて見せる本当に美しい作品でした。

ライリー・キーオとジェナ・マローンの表情と眼差しの静かな演技に素晴らしさ、撮影と音楽によってストーリーを語り、切ないながらも輝く愛をみせるソー監督の手腕。

ずっと観たくても北米版DVDかアメリカのアマプラしかなかったので、今回日本のNETFLIXでは新ではありますが観ることができて本当によかったです。

2016年に見れていたら確実にベスト入り。

あまりウーマンス映画って意識したことがないですが、よく出てくる「テルマ&ルイーズ」とか「シンプル・フェイバー」とか結構好きなので、掘ってみようかなと思います。

今回の感想は以上になります。

最後まで読んでいただいてどうもありがとうございました。

それではまた次の映画の記事で。

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