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「評決」”The Verdict”(1982)

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the verdict 1982-paul-newman 映画レビュー
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「評決」(1982)

  • 監督:シドニー・ルメット
  • 脚本:デヴィッド・マメット
  • 原作:バリー・リード
  • 製作:デイヴィッド・ブラウン、リチャード・D・ザナック
  • 製作総指揮:バート・ハリス
  • 音楽:ジョニー・マンデル
  • 撮影:アンジェイ・バートコウィアク
  • 編集:ピーター・フランク
  • 出演:ポール・ニューマン、シャーロット・ランプリング、ジャック・ウォーデン、ジェームズ・メイスン 他

the verdict 1982-paul-newman

「12人の怒れる男」「セルピコ」などのシドニー・ルメット監督が、「暴力脱獄」などのポール・ニューマンを主役に撮った法廷劇映画。

医療現場での処置ミスを扱うバリー・リードの小説をもとにした作品になっており、映画自体は高い評価を受け、受賞には至らなかったものの、アカデミー賞にては5部門にノミネートされました。

主演のポール・ニューマンの初老の弁護士演技も素晴らしいもので、若き日とはまた違う味わいを残します。

ニューマンの映画をたくさん見ていた学生時代に出会った作品で、ルメット監督作としても好きな一本。

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アルコール依存の弁護士フランクは、新聞に載る葬儀の告知欄を見ては、見ず知らずの人間の葬儀に出かけ、集まった人に名刺を配り歩いていた。

うだつの上がらない人生に嫌気の指すフランクは、酒を飲み紛らわすことしかできない。

そんなあるとき、先輩弁護士であるミッキーが、フランクに楽な案件を紹介してくれた。

ある病院での妊婦の医療過誤である。

大事を避けたい病院側が示談を申し出ることは明白であり、フランクはただその金額を吊り上げればいい、楽な仕事だった。

話を進め、証拠のために被害者のいる病床へ行き写真を撮るフランク。

しかし、ふと自分の目の前に横たわる女性を見て、彼の心は揺れた。

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シドニー・ルメット監督の社会派映画とくれば、品質保証は確定されたようなものですが、今作は社会的な部分の意味合いも大きくありますが、一人の男の再起と贖罪の旅でもあります。

その罪滅ぼしをするフランクを演じるポール・ニューマンですが、トレードマークのベビースマイルはほとんどみせず、クタクタで悩みまくり、不憫かつダメな男で新鮮に映ります。

彼の哀愁ある姿に、その綺麗なブルーの瞳と時折見せる端正な表情が、正義の心をのぞかせています。

彼はスーパーヒーローではなく、負け犬です。

しかし一つだけ、正しいことをしたいという、ルメット監督の作品では12人の怒れる男でヘンリー・フォンだが演じた陪審員や、セルピコのような愚直な芯があります。

ニューマンはその正しさに賭けようというカッコよさが滲む素敵な演技をしています。

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スタイルは写実的で、音楽も全然使わず、淡々と進めていく。

法廷劇というとアクションすら少ないのですが、それぞれの人間ドラマが濃厚に構築され、確かにこの世界で生きてきた人間が造形されています。

そしてこの作品で終始描かれているのは、体制と権力のある者と、弱き者です。

医師団、教会、弁護団は本当に腹立たしく、戦略や誘導など確かにそのシステム内での正解を見せつけてきますが、同時に人としてはまったく正解ではないと映ります。

反対に、正しいことができずにいる人が多く出てきます。

口をふさがれる看護師や、姉を想い闘い続けてきた家族、正当な資格を持たないがゆえにすべてのキャリアを否定されてしまう医師。

そしてシャーロット・ランプリングが演じる、法制度の中に弱者として戻ってきたローラ。

彼女もフランクのようにプライベートで崩れてしまった存在。

私は彼女が激しくフランクを批判するシーンがとても印象に残っています。

彼女自身は、フランクと違い戦うことができなかった人間です。その彼女から見て、フランクは応援したい存在。

彼女は実は敵側ではありますが、ここでフランクを心の底から激励するのが何とも感動的です。

そもそも示談を選んでいたら?勝てないと思って進んでいたら?

ローラ自身は負けてしまったのですが、彼女はフランクの正義を信じたのでしょう。

だからこそ、安易なロマンス的にはせず、厳しくも本当の意味で寄り添う術を選んだのだと思います。

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裁判とは、弱き者が正義をかけ大きなものへ挑戦できる場なんだと言われます。

そこでは法律のシステムにのっとり、証言がなされ、尋問がなされ、そして不適切・適切な証拠が仕訳けられ、それらを吟味して評決を下す。

たしかに、裁判それ自体でみれば、証人や証拠の扱いにおいてコンキャノンは上手くやり、そしてフランクは負けです。

しかし、評決を下すのは機械ではない。人間なのです。

魂を持ち他者を推しはかり、必死で考えそして正義を信じる人々。

私たちが法なのです。

この映画は法制度を真正面から描きながら、人としての正義は法を超えると伝えます。

冒頭で被害者の写真を撮っていた時にフランクが感じたものを、裁判を通して陪審員たちが、そしてこの作品を観る人が感じるのです。

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フランクは真っ当に生きてこれなかった贖罪を果たしますが、一方でローラは負けてしまった。

彼女からの電話は鳴り続けますが、それを受けるのかはわからず幕を閉じる。

しかしもしも、ローラが今回の件でのスパイ活動の強要に関して助けを求めれば、フランクはまた正しいことをするのかなと、私は個人的に思っています。

気さくな感じとか笑顔とかはないポール・ニューマンですが、彼のヨレヨレの姿と、なお強く感じる正義感を楽しめる作品。

シドニー・ルメット監督の確かな手腕を堪能できるおススメの映画です。

感想はこのくらいになります。最後まで読んでいただきありがとうございました。

それではまた次の記事にて。

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