「バズ・ライトイヤー」(2022)
作品概要
- 監督:アンガス・マクレーン
- 脚本:ピート・ドクター
- 原作:ジョン・ラセター、ピート・ドクター、アンドリュー・スタントン、ジョー・ランフト 「バズ・ライトイヤー」
- 製作:ガリン・ズースマン
- 音楽:マイケル・ジアッキーノ
- 撮影:ジェレミー・ラスキー、イアン・メギッベン
- 編集:アンソニー・グリーンバーグ
- 出演:クリス・エヴァンス、キキ・パーマー、タイカ・ワイティティ、ピーター・ソーン、ジェームズ・ブローリン 他
ピクサーが送り出した名作「トイ・ストーリー」シリーズ。2019年には最終章として「トイ・ストーリー4」が公開されました。
主人公のおもちゃたちの中にいて、特に重要な役を努めていたバズ・ライトイヤーというスペースレンジャーのおもちゃ。
今作はそのおもちゃの元になった映画を実際に映画化したという設定です。
監督は「ファインディング・ドリー」の共同監督であり今作が長編監督は初となるアンガス・マクレーン。
声優としてもこれまでいろいろなピクサーの作品に出ていた方です。
主演はオリジナルシリーズの声とは変わって「キャプテン・アメリカ」シリーズのクリス・エヴァンスがバズの声を担当します。
他にも「ハスラーズ」などのキキ・パーマー、監督、俳優であるタイカ・ワイティティが出演しています。
ピクサーの作品としては、本当に久しぶりに劇場公開された作品になります。何度となく、コロナの影響から劇場を離れ、保有するディズニー+での配信公開になっていたので、なんだかピクサー作品が映画館で観れるだけで特別な感じ。
公開日の夜の回、都内で観てきましたが、ちょうど公開日がファーストデーだったこともあってほぼ満席でした。
〜あらすじ〜
宇宙探索任務で地球から旅に出ていたスペース・レンジャー。
帰路の途中、生命体反応を探知した星に降り立ち調査することになったバズ・ライトイヤーは、相棒のアリーシャと新人を連れて森を探索。
そこで巨大な昆虫や触手状に伸びるツタに襲われ、逃げようと宇宙船を飛ばした際山に激突し不時着。
エネルギー源が修復不能な損壊を起こしており、宇宙船のコロニー全員が星から脱出できなくなってしまった。
責任を感じたバズは超高速飛行を達成できるエネルギー組成と実験飛行を進んで行い、ついて初めてのテスト飛行を迎えた。
超高速に達することができなかったバズだが、それ以上に問題だったのは、一度の高速飛行をすると、コロニーでは4年の年月が経ってしまうことだった。
諦められないバズは、アリーシャや仲間たちと過ごす時間を捨て、何度も超高速飛行を試みる。
感想/レビュー
初のシリーズ無関係作品
今作の立ち位置がそもそも意味不明です。
アンディが1995年にバズ・ライトイヤーのおもちゃを買ってもらった。バズ・ライトイヤーはアンディが観た映画のキャラクター。
今作はその映画であるという設定。
スピンオフのような前日譚のような、それでいて実は本筋とは関係ない位置にあるという珍しいものです。
して、映画としてどうなのだろうかといえば、及第点の宇宙アクションアドベンチャーではないでしょうか。
ただし、トイ・ストーリーの物語という必要性があったのかというと無いと言っていいでしょうし、あまりに切り離されすぎているという無関係さは鑑賞中どうしてもぬぐえませんでした。
うがった見方をするとすれば、やはりフランチャイズからもうひとひねり興行収入を得たかったのかなとすら思えました。
世間的には意見が割れて、嫌われてもいる「トイ・ストーリー」4は、描かれるべきチャプターであったので良いですが、今作ばかりはどうもその存在を擁護するのは難しいですね。
なので、ある意味トイ・ストーリーというコンテンツから離れた別のものだと思って観るのが良いでしょう(だったらバズ・ライトイヤーである意味もないですが)。
主題テーマの借り物感
しかし一つのスペースアクションとして見ても、実はあまりオリジナリティを感じなかったのが正直なところ。
そもそもバズのキャラ(おもちゃとして)はどことなく「スター・ウォーズ」っぽさがありますよね。ザーグのという敵キャラももともとダース・ベイダーのリップオフみたいなものですし。
今回も超高速飛行の描写はまんまハイパードライブだったりで、すごくスター・ウォーズ感があります。
それ自体はまあおおもとからそんなものなので、別にいいのですけれど。ソックスはR2とC3-POを合わせたような相棒です。
「トイ・ストーリー」は主題がシンプルです。
”もしも人間が見ていないところで、おもちゃが生きていて動いていたら”。それだけ。
しかしそのユニークな設定一つでとてつもない感情の結び付けをくれていました。
今作は一言で言い表せるのでしょうか。
感情移入できない距離感
バズにはもちろん成長があります。序盤に一人で行動し誰も頼らなかったこと。
人と協力しないことが彼の欠点であり、今回はチームを組んでいくことで助け合って目的を達成することがストーリーとして用意されています。
ただしそうした微妙な成長というのはイジーの宇宙恐怖症にもあったり、ほかのメンバーも失敗ばかりでも挑戦することとかが用意はされています。
でもただ流れでそうなるってだけで別に感情的に結びつくことはなかったです。
さらにはマルチバースのような展開からある仕掛けが展開され、そこまでいくとほとんどMCUのパクリにしか見えませんでした(「エンドゲーム」と「マルチバース・オブ・マッドネス」からの拝借つぎはぎみたいな)。
序盤の時が流れる残酷さは良いなと思いましたが、その後のパートは本当に見たことある話の連続でした。
トイ・ストーリーはどの作品も心を揺さぶってきたわけですが、こんなにも感情移入できなかったのは驚きです。
ソックスは救いです。これは間違いないです。
ピクサーはこれまで必ず、そのCGの表現を更新し続けてきたと思います。
「モンスターズ・ユニバーシティ」ではあのボロボロに年季の入った野球帽に驚き、そして「あの夏のルカ」ではあまりにおいしそうで臭いも感じるほどのジェノベーゼに感心しました。
今作ではこのソックスというぬいぐるみでありながらもロボットであるキャラのその質感がすごくいいですね。
ああいうぬいぐるみのその質感とか感触までわかるルックですが、同時にちゃんとやわらかいわけではなくて骨格があるという点も感じられてそこは素晴らしいです。
と、そこまでな印象の作品でした。
心でつながることができず、トイ・ストーリーの前日譚にもなっておらずまたシリーズの1つの意味もなく。
最終的には本家シリーズのバズの性格背景になるもので落ち着くとか、そのような終わらせ方もできたんじゃないのかな。
直近はウッディ役のトム・ハンクスが、ティム・アレン不在を理解できないと発言していましたが、ティム自身が乗り気ではなかったプロジェクトのようですし。制作意図が理解できない映画です。
シンプルなアクションアドベンチャーとして観るにはいいかと思います。
逆にトイ・ストーリーシリーズの思い出とか思い入れがない方が、素直に楽しめるのかと思います。
というところで今回の感想はここまで。
最後まで読んでいただきますどうもありがとうございました。
ではまた。
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