「ツイスターズ」(2024)
作品解説
- 監督:リー・アイザック・チョン
- 製作:フランク・マーシャル、パトリック・クローリー
- 製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ、トーマス・ヘイスリップ、アシュリー・ジェイ・サンドバーグ
- キャラクター創造:マイケル・クライトン、アン=マリー・マーティン
- 原案:ジョセフ・コジンスキー
- 脚本:マーク・L・スミス
- 撮影:ダン・ミンデル
- 編集:テリリン・A・シュロプシャー
- 音楽:ベンジャミン・ウォルフィッシュ
- 出演:デイジー・エドガー=ジョーンズ、グレン・パウエル、アンソニー・ラモス、ブランドン・ペレア、サッシャ・レーン、キーナン・シプカ、モーラ・ティアニー 他
巨大竜巻が頻発するオクラホマを舞台に、気象予測の天才と竜巻を追いかけるグループらが竜巻の観測や仕組みを調査するために奔走するアドベンチャー。
「ザリガニの鳴くところ」で注目を集めたデイジー・エドガー=ジョーンズが天才気象学者ケイトを、「トップガン マーヴェリック」のグレン・パウエルがストームチェイサーのタイラーを、「トランスフォーマー ビースト覚醒」のアンソニー・ラモスがケイトの友人ハビを演じます。
監督は「ミナリ」のリー・アイザック・チョンが務め、脚本は「レヴェナント 蘇えりし者」で知られるマーク・L・スミスが担当しました。
なぜいまさらあのツイスター?とも思っていましたが、ディザスター映画ってだけではなくてデイジー・エドガー=ジョーンズにグレン・パウエル、そしてアンソニー・ラモスなど今の映画界をけん引していく俳優陣の集結と、リー・アイザック・チョン監督の新作ってことで観たくはありました。
ムビチケも買っていたのに観に行くのが遅くなってしまい、結局お盆休み中に。都内に行ってきましたが、少し公開から経っていて他の新作にスクリーンを譲ていたこともあり、ちょっと小さめのスクリーン。でも連休もあってなのか満員でした。
~あらすじ~
オクラホマで竜巻調査をする科学研究チームのリーダーであるケイト。開発した粒子を竜巻に巻き上げて勢力を弱める実験で、予想しなかった巨大竜巻に遭遇し、チームのほとんどを失ってしまう。
それから5年。ケイトは現場を離れてニューヨークで気象予報局に勤めていた。そこに元チームメンバーのハビが現れ、最近オクラホマで竜巻が頻繁に起きており、その調査のためにケイトの力が必要だという。
過去の恐怖に囚われているケイトだが、1週間だけとの約束でハビに同行。観測チームに加わることになった。
そしてオクラホマには、竜巻を追いかけてYoutube配信をしているグループと、そのリーダーであるタイラーも駆けつけていた。
お祭り騒ぎして記者まで同行しているタイラーのグループとハビの研究員たちは衝突しがちであったが、気象た竜巻にかける情熱がケイトとタイラーを結び付けていった。
感想レビュー/考察
今回は独立した続編
「ツイスター」という1996年の映画があり、もともとはそのリメイクとして進行していた作品ですが、結論としては今作は続編ということになります。
とはいえ地続きのものではなく、人物も総入れ替えですし絶対的な話のつながりもない独立したものになっています。
序盤すぐに登場する竜巻を計測しデータを収集するマシン”ドロシー”は、前作「ツイスター」で重要な役割を果たしていたマシン。これが竜巻研究に革命を起こしている世界ということで、その点が続編です。
でもそれくらいですね。はっきり言って全作になる「ツイスター」を見ておくと小ネタが分かるだけで、観ていなくてもぜんぜん問題ないです。
快活なエンタメ映画
そんなすっきりとした、過去に寄り掛からずに自分の足で立つこの作品はいい意味で期待を裏切られました。
なにかしら昨今のエンタメ映画って、その、面倒くさい感じの外圧を感じることがあると思うんです。MCUとかね。
その強いられてやる感じが一切ない。この時代にここまでストレートに娯楽映画って感じで120分突き抜けていく映画は結構珍しい。誰でも楽しめて、スリル満点で気持ちのいい映画になっていました。
序盤のアバンタイトルの時点で、ケイトと研究チームが巨大竜巻に遭遇。やはり自然はそう簡単に予測したりコントロールできない。ここでしっかりと竜巻の恐ろしさを観客に植え付けてきます。
映像的な迫力と共に、ものすごく短い時間ながら関係性が見える仲間が次々にあっさりと消えていく絶望感。高架下で必死にたえて終わるのを待つしかない怖さがスクリーンから伝わります。
それがきっかけで、「ツイスターズ」のジョーよろしくケイトはトラウマを抱えてしまう。
根底にはこの恐怖の中で怖気づいてしまったケイトが、やはり人を助けるために挑戦していくドラマが置かれています。
それは一見お調子ものに思えたタイラーたちもそうですし、中盤以降怪しい動きを見せていったハビも最後は人を助けるために動きます。
竜巻を追っているのは、1つにこの理解できない美しく壮大な自然現象を解明すること、そして2つに解明することで人の命や大切な家と思い出を守ることです。
ケイトとタイラーのつながりが良い
ベースを人助けに置きつつ、ケイトが気象予測の天才というところ、またタイラーが幼いころから竜巻に惚れこんでいるところでつながるのも良いですね。必要以上にベタベタしないのも、ライバルから親友になっていく距離感もまた良い。
はじめは竜巻の予想からケイトの才能を拾いしつつ、彼女のぬぐえない不安を描きます。その時点ではタイラーは一歩遅れている感じで、敵チームって感じです。
しかし竜巻被害にあった町を支援する彼らの姿と、一方で被害者から土地を買おうとする保安官のために働くハビが対比され、ケイトがタイラーへの認識を変える。
いろいろと認識が変わっていく中で、”竜巻に夢中になっている人間同士”としてつながっていく感じが好きでした。
デイジー・エドガー=ジョーンズは「ザリガニの鳴くところ」でも大自然との相性が良かったですが、彼女にはなにかナチュラルな優しさや美しさがあります。素朴だってわけでもないですが、作った華やかさじゃない華がありますね。
そして「トップガン マーヴェリック」でみんなのスターになったグレン・パウエル。まさにキャラ的にはハングマンみたいな登場の仕方でしたが、やるときはやる男なカッコよさは「ドリーム」の時のようです。
臨場感ある映画館ライド
そして立ち向かっていく竜巻。以前の「ツイスター」では特殊効果を駆使した表現が見事で楽しかった思い出がありますが、今作ではVFXがふんだんに使われることにより様々な視点を生み出しています。
竜巻による破壊の迫力はもちろんですが、発生時に空気が重くなっている描写として葉っぱが流れずに滞留する描写とか良かったですね。
冷たい空気の方が重く下にたまりやすく、暖かい空気は上に登る。エアコン暖房で暖かい空気が天井に行って足元が寒いあれですね。ガストフロントという形で、積乱雲の冷たく重い空気が、下にある暖かい空気に流れ出していく。町がとんでもない強風にさらされたところとか、すごい迫力でした。
とりわけクライマックスが好きです。
竜巻の接近によって暴風が吹き荒れていく中で、地下室がないのでみんなで映画館に避難します。座席の足元、各列の間に身をかがめていると、「フランケンシュタインの怪物」が映るスクリーンを竜巻がおそう。
するとまるで巨大なスクリーンのように、外壁も画面も吹き飛ばされてできた大きな枠に、外の竜巻が見える。まるでそれこそが映画館の中で巨大竜巻映画を見ているような疑似的な画になっているんです。
メタ的ですが、この画面に文字通り吸い込まれそうな迫力こそ、まさに映画館でこの作品を観ている喜びです。
良いショットでした。
オクラホマの自然とカントリーソングに彩られて
あとは技術面では’96年の「ツイスター」と同じく35mmカメラで撮影している点。
リー監督曰く、オクラホマの持つ自然な色合いをそのままに撮りたかったので、ほとんどを35mm撮影したそうです。
結構雄大な自然も見ものなんです。大きなスクリーンで土地や木々、草原と街並み、夜の空気やロデオ会場の熱気などを肌で感じる。
オクラホマ旅行映画とおもっても良いですね。
その他劇中の楽曲も、映画を見ながら聴いていて結構好きになりました。途中で失望したケイトが実家に帰るシーンで流れる、レイニー・ウィルソンの”Out of Oklahoma”。
歌詞がまさにケイトのその時を示していて素敵。ちなみEDで流れているミランダ・ランバートの”This Ain’t Kansas Anymore”も良いですよね。
カントリーは学生の頃実は聴いていて好きなジャンル。最近は離れてしまったけど、このカントリーだけが持っている伸びとか、大地や風に触れるような感覚が映画にもとてもあっていました。
恐怖に立ち向かい勇敢に戦う”ライオン”
後小ネタなんですが、巧いなと思ったのが、最初の竜巻調査の際にハビとケイトがのる車が「ライオン」と呼ばれているところ。
もちろん、これはあの機械ドロシーの元ネタの「オズの魔法使い」からきています。カカシやブリキもいます。ただ、なぜハビとケイトのチームがライオンなのか考えるとおもしろい。
オズの魔法使いのライオンって”臆病なライオン”ですよね。ケイトは過去のトラウマから恐れを抱いていて行動できないし、ハビは金儲けに加担していることを認めるのが怖くて隠している。
そこで巨大な竜巻と傷つく人々という事実に直面し、二人とも勇気を振り絞り成長していくのですね。
全体に快活でまっすぐ楽しめる、クラウドプリーザーな映画でおすすめです。
そしてぜひ、オクラホマの自然や素晴らしい楽曲を映画館のスクリーンと音響で楽しんでほしいです。今回の感想はここまで。
ではまた。
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