「ターミネーター:ニュー・フェイト」(2019)
- 監督:ティム・ミラー
- 脚本:デヴィッド・S・ゴイヤー、ジャスティン・ローズ、ビリー・レイ
- 原案:ジェームズ・キャメロン、ゲイル・アン・ハード
- 製作:ジェームズ・キャメロン、デヴィッド・エリソン
- 音楽:ジャンキーXL
- 撮影:ケン・セング
- 編集:ジュリアン・クラーク
- 出演:リンダ・ハミルトン、マッケンジー・デイヴィス、ナタリア・レイエス、アーノルド・シュワルツェネッガー、ガブリエル・ルナ 他
ジェームズ・キャメロンが生み出したSFシリーズ「ターミネーター」。
その後複数の続編が製作されてきた中で、キャメロン自身が製作へ復帰し、正式な「ターミネーター2」の続編として制作された作品になります。
監督は「デッドプール」のティム・ミラー。オリジナルキャストから、リンダ・ハミルトン、アーノルド・シュワルツェネッガーが出演。
また今作には時空を超える戦士として「ブレードランナー2049」や「タリーと私の秘密の時間」などのマッケンジー・デイヴィスが出ており、彼女に守られる少女役にはコロンビアの女優ナタリア・レイエス。
そして抹殺指令を受けて現代へやってくる新型ターミネーターとしてガブリエル・ルナが出ています。
ターミネーターシリーズはやはり1、2は人生に残る作品、今回は特にあのリンダ・ハミルトンが戻ってくるということで楽しみにしていました。
通常字幕での鑑賞ですが、すごい混みあっていましたね。若い方もいましたが、おそらく初代からのファンの方が多めだったかな?
サラ・コナーとその息子ジョン、そして彼らを守ろうとした1体のターミネーターの手により人類は審判の日を免れた。
それから時は流れ現代。メキシコに再び未来から2人が送り込まれ、一人の少女ダニーをめぐり激しい戦いを始める。
1人は新型のターミネーターでありダニー抹殺のため突き進み、もう一人のグレースという女性は強化型人間でありダニーを守るべくやってきたのだ。
強力な新型ターミネーターRev-9に圧倒されるグレースたちを、あのサラ・コナーが救う。
変えたはずの未来からなぜターミネーターが再び送り込まれてきたのか。そしてサラはなぜ時空を超えてくる戦士の位置を突き止められるのか。
彼らはRev-9を倒しダニーを守るため行動を共にすることになる。
まずどうしても確認しておきたいのが、この作品の位置づけです。
わかる人向けに言えば、今年2019年の前半に公開された「ハロウィン」ですね。
シリーズとして3、4、ジェニシスこそあったんですが、それらは別物として、2の直接の続きですよと製作されたということです。
あの「ターミネーター2」のその後として、一応3があるわけで、個人的には3の話自体は好きではないですが、実は3を作ったこと自体には敬意を持っています。
あの2の後、つまり映画という物語が終わった後に、その中で生きた人物に人生があることを逃げずに描いたからです。
審判の日を知らない人間からしたら異常犯罪者親子。
そして自ら英雄になる未来を消し去ったことで、本当に何者でもない人間になってしまったこと、誰もそれを知るすべがないこと。
ここを避けなかった心意気は好きですが、映画としてはちょっと褒められたものではないかな。
今作は同じようなアプローチでありながら、この「ターミネーター」シリーズの主人公、サラ・コナーの人生を描いています。
未来からの刺客により、大人しいウエイトレスだったサラ・コナーは消え、戦士となった。
しかし、やはり自分で未来を切り開いたことにより、逆に普通の生活も家族も人生も送ることはできなくなってしまいました。
そして今作では、サラの生きる糧すら存在しないのです。
もちろんサラ・コナー、そしてT-800(シュワちゃん)がスクリーンに集うのはそこにノスタルジーがあります。
同じ画面構成のショットとかもありますし。
しかし個人的に良かったのは、この歴史の重要人物ではなくなった、メインストリームから外れたサラが、再び生きる意味を見出すことです。
そこで今作がある意味で1作目を繰り返すのが、グレースとダニーの関係性です。
重要人物を守るために未来から送られてきた人間(今回はアクションのために強化設定ですが)。
もちろん短髪長身スリムマッチョのマッケンジー・デイヴィスの美しカッコいい雄姿は素晴らしく、肉弾戦もスピーディでこれまでの戦闘とはまた違う感じで良かったです。
サラとダニーとグレースと、主軸を務めるのが女性であることや、もはや重要な男を生む役目ではなく、女性自身が重要な存在になっているなど、2019年の世相を反映した設定にもなっています。
ただ私が本当に今作が好きになった理由は、ダニーとグレースにサラとカイルを見たからです。
それはターミネーターシリーズが大きくなるにつれて薄くなっていった、もともと続編は要らないとされていた1作目に感じた切ない愛の物語です。
どういう流れであっても、どこから、いつの時代から来た者であっても、関わり合いことで生きる目的が生まれる。
今作でAIが人間になり、頑なに認めなかったサラもついにT-800をカールと呼びます。
ターミネーターが人らしさを学んでいくというのは、サラではなく、また別の未来を意識していたジョンの意思です。
ターミネーター(抹殺者)としてのアイコンであったサングラス(瞳の欠損で機械が露出するのを隠すアレ)をかけずに出かけるT-800は、もはや機械ではなく、カールという魂を持った存在に思えます。
そのカールが「ジョンのために」と、生まれる前、生まれてからも運命に翻弄されたあの少年の理想を実現しながら散っていくのは泣けます。
人というのは誰かに救われ、変えられ、誰かのために生きるものなのかもしれません。
グレースとダニーは悲しい運命に出会う。お互いに助けれられ、どれだけ相手を想っていても、歴史が決まっている。
死が運命で必然だったカイルを想うサラは、グレースに話しかけることもできないダニーをみて何を思うのか。
1と2の遺産を使いまくる点では「フォースの覚醒」にも似ていますが、今作でサラ・コナーが歴史の流れから外れたこと、そして人間は愚かで、スカイネットやリージョンを結局は生み出すわけです。
でも、どんな歴史になっても、やはり善き人が存在し、英雄が生まれるものですね。
総合的には満足な作品でした。傑作と言わずとも、間違いなく1、2後一番まともなターミネーター映画でしょう。
個人的にはターミネーターは、切ない愛の物語だったことを思い起こさせてくれる素敵な作品だったと思います。
今回の感想はここまで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
それではまた次の記事で。
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