「バーバラと心の巨人」(2017)

  • 監督:アンダース・ウォルター
  • 脚本:ジョー・ケリー
  • 原作:ジョー・ケリー、ケン・ニイムラ 「I Kill Giants」
  • 製作:クリス・コロンバス、マイケル・バーナサン、ジョー・ケリー、ニック・スパイサー、キム・マグヌッソン
  • 製作総指揮:マーク・ラドクリフ、ジャスティン・ナッピ、ジョハンナ・ホールデン、ナディア・カムリッチ、ジル・ワテルケン、ジェームズ・ギブ、ゴードン・ピュー
  • 音楽:ローレン・ペレス・デル・マール
  • 撮影:ラスムス・ハイゼ
  • 編集:ラース・ウィッシング
  • 出演:マディソン・ウルフ、シドニー・ウェイド、イモージェン・プーツ、ローリー・ジャクソン、ゾーイ・サルダナ 他

病を抱えた少年と、病院の清掃員の交流を描いたショート「ヘリウム」(2014)でアカデミー賞短編映画賞を獲得したアンダース・ウォルター監督が、初の長編監督作として作った作品。

元々はグラフィック・ノベルが原作となっているようです。

主演はマディソン・ウルフ。彼女はオーディションでたくさんの女優の中からこの役を勝ち取ったようです。

また、姉の役には「グリーン・ルーム」のイモージェン・プーツ、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズのゾーイ・サルダナが学校のセラピストを演じています。

公開が決まった際には、邦題と日本版ポスターの可愛い感じが話題になりましたね。ローカライズはインポートでのマーケティングの基本ですから何を言ってもしょうがないですが。

土曜日に日比谷シャンテで観てきましたが、朝一番の回だったからかあまり混んでなかったです。

バーバラはいつもウサギの耳を付け、あちこち森の中を歩き回っては、なにやらエサ用の液体を配合して気に塗りつけたり、手製の罠を仕掛けている。

彼女は気たるべき巨人に対抗すべく、戦いの準備をしているのだ。いつかその時が来れば、神聖かつ強大な武器であるハンマーを、持っているポーチの封印から解き放ち、巨人を殺す。

そんな彼女の独特の世界観と、あまりに没入しすぎる点に、姉も、そしてバーバラと親しくなろうとする転校生のソフィアも戸惑っていた。

それに加えて、バーバラを変人扱いして、学校ではいじめっこが嫌がらせをしてくる。

だがそんなことはお構いなしで、バーバラはひたすらに巨人を倒すための準備を続ける。

観ていて、特にテーマ的にも思い起こされたのは、J・A・バヨナ監督の「怪物はささやく」(2016)でした。

現実とファンタジーの融合と、それを通して子供が大きな困難や試練に立ち向かうお話。

しかし根底にある部分や描き方は大分違うのかなと思います。

今作は主人公バーバラの造形が気に入っています。いわゆる変人扱いの、いじめっ子に標的にされる少女なんですが、まあ強いこと。

口も達者ですし、度胸もあって頭も良い。とにかく真っ直ぐなんですよ。

もちろん、端から見たらおかしい方向に真っ直ぐ過ぎて、周囲からアカンやつと思われるのも納得できる真っ直ぐ具合ですが。

この点終盤までずっとバーバラがブレないので、少なくともバーバラにとっての現実には巨人がいると認識して観ていけました。

描写としては、バーバラが一人かもしくは友人ソフィアがいても見えないところでファンタジックな存在が画面に出るので、少々、バーバラのいう巨人や観察者が実際にいる(他の人にも見える)かもという感覚が残されていますけども。

でも、考えてみると、バーバラがはっきりと、自分にしか見えないと自覚してしまうのは、テーマ上不要かと思えますのでこのバランスで良かったのかと思います。

姉が階段で電話している時に、バーバラがそっとうさ耳を外すところ、強気なバーバラが見せる数少ない逃げですよね。

それによって普段からバーバラが果敢に彼女にとっての現実と向き合っているのが分かります。

自分にとっての現実、つまりいってしまえば人生と向き合うこと。

バーバラは人からは母の病と別れから逃げているように思われるでしょうけども、彼女は彼女のやり方で、巨人を通してその過酷かつ避けられない現実と向き合っていたということです。

印象的なのはイモージェン・プーツが演じている姉との口論のシーンです。

お姉ちゃんもスゴい巨人と戦っていて、その辛さは十分わかりました。あの若さで親を支え妹と弟の世話もして。なぜ自分の人生はこうなのか。

だからこそ”It’s not fair!”には頷けますが、それに対してバーバラは「私の大変さはお姉ちゃんには分からない」と一蹴しますね。

けっこうヒドイなとも思えるんですが、なるほどバーバラの現実を考えればそれも納得です。

結局、人の現実なんて他人には分からず、どれだけ大変かは理解しにくいものです。

その受難を嘆いて、ただでさえ孤独な闘いの人生を、本当に一人歩む必要はないということ。

今作の終着点は、人の生の肯定でした。

確かに人生は悲劇とも思えます。

いつか必ず終わるし、一緒にいたい人も愛する人もずっといるわけではない。

それどころか、理不尽に満ちています。来たら全てを破壊する巨人と同じく、どうしようもないのです。

お姉ちゃんのように、身に余る責任を背負って、自分を削ることもありますし、ソフィアのように自分で選んでいない環境で孤独に向き合う必要もあります。

そして時には、苦しい選択や、それによって大切な友人を傷つけてしまうこともあるかもしれないですね。

それぞれがそれぞれにとってとても過酷な生を歩むのですが、その孤独な戦いのために本当に孤独になる必要はないんです。

巨人はバーバラを強くし、そして優しくも自分自身の人生を受け入るように諭す。人生は巨人との戦いだけではなくて、親しい友人との楽しい時間もあるのですね。

ファンタジックな映像に、マディソン・ウルフの素敵な演技による魅力的な主人公バーバラが光る暖かな作品でした。

今回はこのくらいで。それでは、また~

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