「ゴジラxコング 新たなる帝国」(2024)
作品解説
- 監督:アダム・ウィンガード
- 製作:メアリー・ペアレント、アレックス・ガルシア、エリック・マクレオド、トーマス・タル、ブライアン・ロジャース
- 製作総指揮: アダム・ウィンガード、ジェン・コンロイ、ジェイ・アシェンフェルター、坂野義光、奥平謙二
- 原案:テリー・ロッシオ、アダム・ウィンガード、サイモン・バレット
- 脚本:テリー・ロッシオ、サイモン・バレット、ジェレミー・スレイター
- 撮影:ベン・セレシン
- 美術:トム・ハモック
- 衣装:エミリー・セレシン
- 編集:ジョシュ・シェファー
- 音楽:トム・ホルケンボルフ、アントニオ・ディ・イオーリオ
- 出演:レベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリー、ケイリー・ホトル、ダン・スティーブンス 他
2014年に始まったハリウッド版「ゴジラ」シリーズと「キングコング:髑髏島の巨神」の世界観をクロスオーバーさせた「モンスターバース」シリーズの第5作目。
監督は、前作「ゴジラvsコング」でもメガホンを取ったアダム・ウィンガード。
出演は、同じく「ゴジラvsコング」から続投するレベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリー、ケイリー・ホトルのほか、「美女と野獣」のダン・スティーブンス、「シャン・チー テン・リングスの伝説」のファラ・チェンなど。
ゴジラとキングコングが大乱闘してからもう3年も経ったのですね。キングギドラがスクリーンに現れたのは2019年なのでもう5年前。結構な長さになってきているシリーズですが、すごい思い入れはなくとも全作見てきました。
今回もやはり大きな映画館で観ておきたいのでIMAX鑑賞。GWの前半の休みで行ってきたのですが、人はそこそこな感じ。結構外国人のファミリーが多かった印象です。
~あらすじ~
怪獣と人類が共生する世界。地球の内部にも未知の領域が広がっていることを知った未確認生物特務機関「モナーク」は、地球内部の世界へ住み着いたコングの様子を観察するとともに、未探索の領域の調査を進めていた。
あるときモナークが異常なシグナルを察知したことを発端に、地上の支配者であるゴジラもその活動を活発化し、原子力発電所を襲い核エネルギーを体内に蓄積するなど何かへの準備を始めた。
一方でそのシグナルの方向に、コングも足を運んでいた。そして未踏の地で自身の同族ともいえる巨大な猿たちのいる場所を発見する。しかし、そこではスカーキングという猿が小大怪獣の力で皆を隷属させており、スカーキングは地上制服を狙っていた。
感想レビュー/考察
大怪獣シリーズ。怪獣はおもに広いジャンルとしては人間との対比からの驚異の象徴で描かれることが多いと思います。ゴジラも例えば「シン・ゴジラ」や「ゴジラ -1.0」はまさにその通りですし、オリジナルの「キング・コング」もその系譜にあると思います。
どうしようもない災害や最悪を体現した存在として、それを人間たちが乗り越えていくところにドラマがある。
一方で特に日本で特有のジャンルとして育ったのが、もう一つの怪獣ジャンル。大怪獣プロレスです。
モンスターバースの前作である「ゴジラVSコング」はその部類にかなり近づいた作品でしたが、今作が完成形になっていると思います。まさか時が流れてハリウッドの巨額投資ブロックバスターが、かつてスーツアクターたちの築いた怪獣プロレスを実現するとは。
怪獣プロレスという分野ではまさにプロレスラー、スターが必要です。彼らには生き物である以上に個性とドラマ、人間臭さが必要なのです。
その点で今作はOPのコングから実に表情豊かになっています。
狩りをして不細工ハイエナ狼みたいなやつを真っ二つに引き裂いた後、体液を体から払いとる。その後滝でシャワーまで浴びて、食事の時には虫歯を痛がって。この辺完全に、大きなゴリラではなくてキングコングというひとつのキャラクターになっています。
「ゴジラVSコング」でもコングはかなり表情豊かになっていましたが、さらに促進されていますね。コングが案内人となり、大スケールの怪獣パートでも観客に繋がりをくれます。
一方のゴジラについてはどうしたものか、今作ではより一層怪獣王の絶対的存在として描かれます。キレ散らかすヤバいやつ。コングを見つけ次第、問答無用でとびかかり、話を聞かないブチギレ王。
ピラミッドをリングコーナーのようにして、巴投げのようなバックドロップのようなプロレスを見せたときは笑ってしまいました。
また今作のヴィラン、つまり悪役レスラーであるスカーキングも同じ。登場シーンでのあの斜めな構え方とか、普通に猿じゃないしキャラ感ゴリゴリでした。
まあ問題としてはこのスカーキングが団体かつ白いドラゴンを操るから脅威だっただけで、実際のバトルとしてはあまり強くなくて緊張感がないところが挙げられますが。しかし禿げててなんだか卑しい感じでヒョロ長の造形は効果的かも。
キャラクターでドライブする怪獣物語において、ふと楽しいなと思ったのはそのセリフのなさでした。
モンスターたちが互いに咆哮して殴り合って、いろいろな表情を作って所作をする。それだけで映画が進行していく。何となくですが、ある意味でめっちゃ轟音のサイレント映画って感じです。
ビジュアルで語っていくところにはもしかすると、怪獣映画が持つ言語性とか普遍性があるのかもしれません。
正直なところ人間側の話しているあれこれも、脚本のすじというのもめちゃくちゃですし、人間が巻き込まれていくようなスタイルでなくなっているので、ストーリーの部分での楽しさは感じません。
キャラクターは多すぎないし、別にうっとうしいわけでもない。ジアが自分の仲間たち、民族を見つけていく点とコングが孤独を乗り越えていく点などがシンクロしたり、母親にとっての別れの予感みたいなものもあったりで、関係ない話になっていないのは好感です。
ただそれよりも、おっきなモンスターが暴れまわって観終わってからあれがどうだこうだ、好きなところやシーンを話し合うのが良いのでしょう。
ゴジラのエネルギー吸収新形態が完全に20倍界王拳だったり、スカーキングの王国が「猿の惑星」っぽく、隷属のさせ方なんてまさにコバを思い出すものです。
コングが最終決戦で氷漬けになったスカーキングを粉砕するところとか、「ターミネーター2」の”Hasta la vista, baby”を思い出します。
個人的には小さな子ザルを武器に使って思いっきり他のエイプたちをぶっ叩くところとか笑いましたし。
この感想を書いているときに、なんか思い出に残る印象的なシーンとかキャラの仕草なんてものを思い出す。一緒に観た人ととかと話して盛り上がれるんで良いなと思います。
何期待を持っていくか次第なところがあるので、大画面で巨大怪獣がプロレスバトルをするのを観たい!ストーリーとかメッセージなんてどうでもいいし、人間側の被害とか気にしない感じのすっきり割り切った感じが良い。
そんなニーズならピッタリの怪獣映画でした。
モンスターバースが今後どうなっていくのかは分からないですが、今作は北米での興行収入がよく、また全世界興収3億6000万ドルの突破などまあ収益的には悪くなさそうです。
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