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「ある少年の告白」”Boy Erased”(2018)

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映画レビュー
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「ある少年の告白」(2018)

  • 監督:ジョエル・エドガートン
  • 脚本:ジョエル・エドガートン
  • 原作:ガラルド・コンリー 『Boy Erased: A Memoir』
  • 製作:ジョエル・エドガートン、スティーヴ・ゴリン、ケリー・コハンスキー・ロバーツ
  • 音楽:ダニー・ベンシ、ソーンダー・ジュリーアーンズ
  • 撮影:エドゥアルド・グラウ
  • 編集:ジェイ・ラビノウィッツ
  • 出演:ルーカス・ヘッジス、ニコール・キッドマン、ラッセル・クロウ、グザヴィエ・ドラン、トロイ・シヴァン、ジョエル・エドガートン 他

同性愛者を矯正する施設へと送られた少年を描くドラマ。

ガラルド・コンリーの伝記小説を基に、「ザ・ギフト」などのジョエル・エドガートンが監督をつとめます。

主演は「マンチェスター・バイ・ザ・シー」などのルーカス・ヘッジス。母役にはニコール・キッドマン、父としてラッセル・クロウも出演。

また、今作の主題かを担当したトロイ・シヴァンや監督として有名なグザヴィエ・ドランも施設で出会う青年たちを演じています。

ルーカス・ヘッジス主演ですしジョエル・エドガートンの新作ということで前から楽しみにしていました。「ビューティフル・ボーイ」、「ベン・イズ・バック」など息子の色々映画が多いですね。

日比谷で観たのですが、時間帯のせいか思ったより人が入ってなかったです。

敬虔なキリスト教の一家、社会で育ったジャレッド・エモンズは、自身がゲイであることを両親に打ち明けた。

牧師である父は息子のその存在を受け入れられず、両親はジャレッドをキリスト教系の救済施設へと送る。

そこではセラピストの指導のもと、罪深い同性愛を根本から治療し、魂を救うという。

初めは自分を変えるために前向きだったジャレッドだが、次第に自分自身と抑圧的な施設に苦悩していく。

同性愛者の矯正施設を描くというと、まずデジレー・アカヴァン監督の「ミスエデュケーション」が思い浮かびました。

あちらがチャーミングさを持っていたのに対すると、今作はかなりシリアスな趣です。もちろん、描かれていることが虐待ですから、重苦しいものになって当然ですね。

家族ドラマではありますが、静かなトーンでユーモアも排して問題と真っ直ぐ向き合う分、その重さがあると思いました。

主人公を演じるルーカス・ヘッジスは、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」「スリー・ビルボード」など苦悩する青年役の巨匠と化していますね。もう安心の演技力です。

両親の想いや自分のいままでの思想から、初めはゲイであるという自分のアイデンティティーに悩みますが、後半にかけては逆になり、自分の本質を受け入れない周囲に悩むようになります。

その変化を伴う苦悩がとても素敵でした。

他人の人格を否定し、価値観を押し付け、存在そのものを罪として干渉する。

演じなければ生き残れないような環境の中で、わずかに寄り添う少年少女に切なくも勇気をもらいます。

劇中でなくなってしまうキャメロン、そして”家”へと送られてしまったサラ。ジャレッドは出ることができた施設で終わりを迎えてしまった二人の顔が頭から離れません。

ジャレッドがふと見かけたときのサラのあの表情。心の死んだ顔をしていました。

無理やり語らされる”罪”だって、愛しい人との想い出でしかないのです。それなのに、間違っていると勝手に烙印を押されてしまう。

今作は今尚続いている矯正施設の闇を暴く作品です。奪われていく人格と命を救うためのもの。ただ同時に、ここでの同性愛者だけの話ではないとも感じます。

親から認められたいという子供の想いや、それに反して自身の信念だけを押し付ける親のあり方。

ひいては他者の生き方に自分の考えを押し付け、コントロールし、排除しようとする姿勢そのものの危険性を描いていると感じました。

同調圧力に始まり、LGBTQの否定、女性蔑視など多くは自分が持っている思想に合わないものへの攻撃だと思います。これはこうあるべきだという考えから、それに沿わないものを徹底的に叩く。

日本でも非常に多く見かける光景です。

ジャレッドは、彼の肩をつかむあのタトゥーだらけの悪魔の手を振りほどき、母の愛によって施設から抜け出すことができました。

ジャレッド、キャメロン、違いは近い人間が当人のことを想って行動したかです。

だから自分の思想を第一にしすぎると、大切な人を失ってしまう。そうならないためにも、人のあり方を認めなくてはいけません。

その人がその人である性質は変えられないのですから、周囲の私たちが変わらなければいけない。

重苦しいですが、しっかり向き合う必要のある問題を描いた秀作でした。感想はこのくらいになります。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。また次の記事で。

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