「キングコング:髑髏島の巨神」(2017)
作品解説
- 監督:ジョーダン・ヴォート=ロバーツ
- 脚本:ダン・ギルロイ、マックス・ボレンスタイン、デレク・コノリー
- 原案:ダン・ギルロイ、ジョン・ゲイティンズ
- 製作:トーマス・タル、ジョン・ジャシュー、アレックス・ガルシア、メアリー・ペアント
- 製作総指揮:エリック・マクレオド、エドワード・チェン
- 音楽:ヘンリー・ジャックマン
- 撮影:ラリー・フォン
- 編集:リチャード・ピアソン
- 出演:トム・ヒドルストン、ブリー・ラーソン、サミュエル・L・ジャクソン、ジョン・C・ライリー、ジョン・グッドマン 他
王が帰ってきた。日本の怪獣王がゴジラなら、アメリカのモンスターキングは、コング。
長年人類に圧倒的な姿を見せつけてきた、キングコングの最新作が、今後展開していくモンスターバースとして登場です。ギャレス・エドワーズの「GODZILLA ゴジラ」(2014)から始まり、今後大モンスター祭りとなるわけですから、もちろんキングコングもいなければ。
監督にはジョーダン・ヴォート=ロバーツ。この人は「キングス・オブ・サマー」(2013)など、インディの監督なんで、超大作は初めてなんですね。
主演は、ゴリラとトカゲと・・・いや、「マイティ・ソー」シリーズや「ハイ・ライズ」(2015)などのトム・ヒドルストンに、「ルーム」(2015)でオスカー獲得のブリー・ラーソン。また、サミュエル・L・ジャクソン、ジョン・グッドマンやジョン・C・ライリーなども出演。
公開初日にIMAX3Dで鑑賞しましたが、まあ形態的に値段が高いからか、満席ではなかったです・・・って、まあどうやら興行収入自体そこまで良くなかったみたいですね。モンスター映画はもう古いの?
個人的には大興奮が絶えないですが、とりあえず、絶対にエンドロールの後まで観ること。それだけ守ってほしい。
~あらすじ~
ベトナム戦争が終わりをむかえた、1973年。
政府機関のモナークは、謎の島”髑髏島(スカル・アイランド)”の調査に乗り出す。嵐に包まれ、その生態系も謎に包まれたこの島に、何かがいるというのだ。
ベトナム帰還兵、元英国諜報員に戦場カメラマンも加わり、モナーク調査研究班は島へと乗り込む。
壮絶な嵐を抜け、島を眺めてすぐ、その地質を調べるためにモナークは島を爆撃するのだった。
と、調査団のヘリが次々に撃墜される。
太陽を背に、ヘリをまるでおもちゃのように叩きつけるのは、信じられない大きさのゴリラだった。
感想レビュー/考察
さてと、ピーター・ジャクソンによる「キング・コング」(2005)から10年以上も経つのか・・・と、少し物思いにふけりつつ、今回のコングはかなり楽しみました。
これは初代の「キング・コング」(1933)から続く伝統モンスターですけども、今回は設定をベトナム直後にしていましたね。
それが社会的な深まりを少しはもたせていました。
ポスターとかからして意識させていたのは、コッポラの「地獄の黙示録」(1979)ですね。
このオマージュはワルキューレとヘリコプター的なところや、ある未開の地に入りそこに根付いたよそ者など各所にみられますが、この作品をそういった社会的なテーマこそが主題の作品とは思えなかったですね。
そういった面は感じさせる程度で、あくまで、モンスター映画というのを真っ直ぐやっていると思います。
人間というのはまあ脇役でして、今回は狂気に憑りつかれた、まさにベトナム戦争の象徴的なサミュエル・L・ジャクソンに、コミカルさがさすがのジョン・C・ライリーもいて、個性的なので人間がすっ飛ぶほどではないです。
そこらへんはいい塩梅で持ってきた気がします。
掛け合いの台詞では皮肉の利いたものも多く、「戦争には勝ったのか?」「どの戦争?」とか、ブラックなユーモアも良い感じでした。
でも、怪獣が全てですね、この映画。
なのでモンスター映画が別に好みではないのなら、もしかすると特になんとも思えないかも?
私は、こういう作品きっかけに、ジャンルを好きになってほしいんですけども。
主演が誰なのかっていうところから、この作品は非常に明快かつストレートな語り口。
人間の主要キャラが出る前に、キングコングが出てきますよね。あれが素晴らしい。
色々な怪獣ものでは、まあ煽るための溜めというのがありますよね。まずは被害者の亡きがらを見せて、次は何やら巨大な足あとで・・・なんていう風に。
存在を感じさせる演出で、登場まで引っ張るというのも、真っ当な演出ではあるんですけども、今作は惜しげない。
本当に大サービスというか、とにかく観客にはバカデカイ生き物が大暴れする姿を見てほしいんですよね。
コングがヘリをわしづかみにして叩きつけるまでを、アトラクション的なヘリ内部からのワンカットで見せたり、スカルクロウラーの捕食を一連の流れで見せたり。
カメラはかなり落ち着き、編集の切り替えも極力抑えて、じっくり見せるのでした。
人とモンスターを前後に置きつつ、巨大さを見せつけ、その怪物の動きを引きでしっかり見せて、古いと言えばそうですけども、ある種人形劇のころのモンスター物のような触感もありました。
その中で、人間だって頑張るのですけども、ほぼクソ虫程度なんですよw
今作はコングと美女のお話は無いです。
なんとなく感じさせる部分は残していましたけども、観てくださいよ、今作のブリー・ラーソンのカッコよさを。この最高のショットを。
姉さんのカッコよさにコングも尊敬の気持ちでいっぱいのはずw
トム・ヒドルストンは正直お前がヒロインだろと言わんばかりに、なんか美しいし、サミュエルは顔がキングコングだし。
人間ドラマの部分には、彼らがベトナムと同じことをこの島にしている、まあアメリカの過ちの投影がされています。
おそらく一番監督のテイストが生きているのは、意地です。というか行き過ぎたせいで後戻りが出来なくなった者の八方ふさがりの苦しさと、そこからくる狂気ですね。
この髑髏島に対してベトナムが重なるのはもっともですが、勝てない相手、勝てない戦いに対して、意地になって、多大な犠牲をもっても突き進んでいく愚かしさが重ねられています。
そこに巻き込まれて死んでいくものからすれば、その狂気の指導者こそがモンスター(怪獣)なのです。
ただ全体通して何を観るのって、そりゃこの王の中の王、キングコングです。
とにかくよく動き回り、アクションをしっかりするコング。色々なモンスターが次々に登場し、飽きさせず、大怪獣バトルも盛りだくさんに見せてくれる。
モンスターバースの始まりとして、踏ん切りのついた作品でしたね。
ジョーダン監督は今作の役割とか、突き詰めて誰が主役なのか、観客は何を観たいのかに注力し、それをじっくりと見せることを大切にしていると感じますね。
なにしろ、超大迫力のモンスター乱闘なのに、見やすいもの。
大きなゴリラではなく、キングコングなのです。
ゴリラらしからぬというか、やり過ぎとも思える行動なんかはありますよ、でも、これはキングコングというモンスター、つまりキャラクターであることをしっかり確立しています。
コングはこの先も暴れまわるのですから。
エンディング後・・・というか、権利関係の部分を呼んでいて「え?マジ?!」となったのですけども、もう本当に大興奮でしたよ。元々ゴジラVSキングコングの構想は前から発表されていたのですけども、さすがモンスター映画。私のようなちっぽけなアリンコ程度の人間なんかの想像を超えています。
ストレートに楽しんだ作品。そしてこの先が楽しみすぎる。
王の帰還に大満足のキングコング最新作でした。
ホントに、撮影と編集、監督の演出、称えるべきです。こんなにじっくり見せてくれて本当にありがとう。
そんなところで、今回の感想はおしまいです。それでは、また~
コメント