「ワンダーストラック」”Wonderstruck”(2017)

「ワンダーストラック」(2017)

  • 監督:トッド・ヘインズ
  • 脚本:ブライアン・セルズニック
  • 原作:ブライアン・セルズニック『Wonderstruck』
  • 製作:パメラ・コフラー、ジョン・スロス、クリスティーン・ヴェイコン
  • 製作総指揮:ブライアン・ベル、サンディ・パウエル
  • 音楽:カーター・バーウェル
  • 撮影:エドワード・ラックマン
  • 編集:アフォンソ・ゴンサウヴェス
  • 出演:オークス・フェグリー、ミリセント・シモンズ、ジュリアン・ムーア、ミシェル・ウィリアムズ、ジェイデン・マイケル 他

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「キャロル」(2015)のトッド・ヘインズ監督が、2つの時代を舞台に少年少女の大きな冒険を描いていくドラマ作品。

今作は「ヒューゴの不思議な発明」などのブライアン・セルズニックの同名小説を原作としています。

二つの時代のそれぞれの主人公として、「ピートと秘密の友達」のオークス・フェグリーと、「クワイエット・プレイス」のミリセント・シモンズが出演しています。

また監督とは「エデンより彼方に」で組んでいたジュリアン・ムーアも今作で重要な役として出演。そのほかミシェル・ウィリアムズ、トム・ヌーナンらが出演。

今作はカンヌ国際映画祭でパルムドールのコンペに出品されています。

音楽や人種差別に同性愛など様々な設定を映画化してきたトッド・ヘインズ監督ですが、今回は子どもの冒険的なストーリーになっていますが、いずれにしても現代ではなく昔を舞台にしています。

今作はヘインズ監督作ですし日本での劇場公開もされていましたが(たしか渋谷でやってた)、なぜか未鑑賞のままでした。

Amazonプライムビデオにて見放題配信がされていましたので初めての鑑賞です。

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1977年。交通事故で母を亡くしたベンは叔母のもとに預けられていた。

彼は母の思い出の品の中にある本を見つけ、そこにあったことのない自分の父からの手紙らしきものを見つける。

そこに記されているニューヨークにある本屋へと電話をかけるベンだったが、落雷が家に直撃し、高圧電線から受話器まで電気が通ったことで感電してしまう。

事故のせいで耳が聞こえなくなってしまったベンだが、どうしても父に会ってみたいという思いから、一人で病院を飛び出しニューヨークへ向かうのだった。

一方1927年。生まれつき耳の聞こえないローズは、厳格な父に嫌気がさし、自分が学校に通えないこともあって孤独を募らせていた。

ある日父と喧嘩した彼女は、彼女が強く思いを抱いている女優リリアン・メイヒューに会うために一人ニューヨークへと旅立った。

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2つの時代を交互に生き生きする作品として、その設計についてはところどころでうまくいかない点があったり、そもそも主は1977年側の視点であったりと、全体に完璧なバランスにはなっていないように思えます。

ただ、監督が描き出すそれぞれの時代や映画史などへのノスタルジー、そして孤独を抱えた人間に対する暖かな視線が全体を包み、すごく優しい印象の作品です。

タイトルはワンダーストラック(驚異の一撃)というようなものですが、実際には衝撃的な事実というよりも、もっと柔らかな空気です。

二つの舞台それぞれのプロダクションデザインはさすがなところです。「キャロル」でも見事に50年代のニューヨークを作り上げて見せたヘインズ監督でしたが、それぞれの人物衣装、美術が素晴らしいです。

実際にベンとローズそれぞれの視点から当時の空気を吸い温度を肌で感じるような手触りがあります。

モノクロにて27年、そしてやや赤みのかかったような全体に暖色強めの77年。色彩に関してもよかったです。

今回もヘインズ監督と組んだ、撮影のエドワード・ラックマン、いい仕事ぶり。

また、モノクロのローズのパートについては彼女のパートそれ自体がサイレント映画の構成になっていますね。人物のアクションと音が連携している。

ただ、そこでは一切の言葉の音声は遮断されています。サイレント映画と同様に、重要なセリフは人物がメモとして書き記しローズに提示されることで初めて、観ているこちらにも示されるわけです。

ここはややフラストレーションと思いましたが、でもローズの孤独をそのまま体感させるためには大胆な選択が必要だったと思います。

ミリセント・シモンズの表情での演技が素晴らしく、ローズの寂しさもよかったですし、兄とのボクシングごっこのほほえましいこと。

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逆に外音遮断シーンが少なくなっているベンのパート。

こちらではジェイミーとの交流を通して、世界からの孤独だけではなくてミスコミュニケーションやつながろうとする外界を見せていっているように思えました。

77年の絶妙に汚いマンハッタン、ハーレムのあたりをめぐる小冒険。町中を眺めているだけでもおしゃれで良いですね。

ローズパートは世界との孤独。サイレント映画はローズにとって周囲の人間との差が最も小さく世界を共有できる瞬間でしたが、トーキーの登場によってそれに終わりが告げられる。

ベンも同じ道をたどっていきますが、彼の周りに見えるのは、ジェイミーのように彼とつながろうとする存在でした。

ジェイミーもまた孤独な存在であることはのちに明かされますが、ベンは父に執着しすぎて自分に向けられるコミュニケーションが見えていないのです。

ジェイミーはいろいろとベンを気にかけて、彼に話しかけ仲良くなろうとします。ただこれらのセリフは見ている側には聞こえていても、肝心のベンには全く聞こえていなくて。

ジェイミーが必死に筆談しようとするもどかしさ。

そこで怒って突っ走ってしまうベンでしたが、最後に見つけたのはもっともっと広いつながりの連鎖でした。

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親は離婚しトーキーが訪れ、母が亡くなり父の存在もわからない。

この世界には自分の居場所なんてない。

そんな絶望を感じてしまうような中でこの作品は、過去からのつながりとそれが今も残ることを見せてくれますね。

一人ぼっちに思えても、どこかに自分の痕跡や歴史があるのです。自分が生まれるよりも前からの長い長い歴史。

今目の前になくてもそれは確実に存在するはずです。

この世界というのはまるで大きな歴史博物館なのです。様々なところに、人々の歴史が記され眠っている。広大すぎて探し出すのは大変ですが、自分にとっての過去は必ずあるわけです。

これまでの監督作品らしい時代を完全に切り取って見せる画、孤独を抱える人への暖かな眼差し、ノスタルジーにあふれた作品でした。

すごい衝撃的な感動が押し寄せるというわけではないのですが、落ち着いたトーンと少し大人びた目線で子どもの冒険の旅を描く点、ほかの同系統の作品とは全然違う感じでユニークですね。

トッド・ヘインズ監督は「ダーク・ウォーターズ」を撮っていて、そちらはスリラーということでジャンルが変わって面白そうです。今この時点では日本公開が決まっていない?ようですが、なんとか見てみようかと思います。

最後は話がそれましたが、今回の感想はここまでです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

それではまた。

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