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「ドクター・ストレンジ」”Doctor Strange”(2016)

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映画レビュー
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「ドクター・ストレンジ」(2016)

  • 監督:スコット・デリクソン
  • 脚本:スコット・デリクソン
  • 原案:スタン・リー、スティーヴ・デッコ
  • 製作:ケヴィンン・ファイギ
  • 製作総指揮:ルイス・デスポジート、チャールズ・ニューワース、スタン・リー、ヴィクトリア・アロンソ、スティーヴン・ブルサード
  • 音楽:マイケル・ジアッチーノ
  • 撮影:ベン・デイヴィス
  • 編集:ワイアット・スミス、サブリナ・プリスコ
  • プロダクションデザイン:チャールズ・ウッド
  • 衣装:アレクサンドラ・バーン
  • 出演:ベネディクト・カンバーバッチ、レイチェル・マクアダムス、キウェテル・イジョフォー、ティルダ・スウィントン、マッツ・ミケルセン 他

ご存じマーベル・シネマティック・ユニバースの最新作。シリーズの前作は「シビル・ウォー:キャプテン・アメリカ」(2016)ですが、今作はまた新しいヒーローの第1作目となります。

マーベルコミックの中でも異色の、魔術を使うヒーロー、ドクター・ストレンジの実写映画化です。

監督は「地球が静止する日」(2008)などのスコット・デリクソン。

正直彼の作品ではあまり好きなものがなかったw 主演には「シャーロック」シリーズ、「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」(2014)などのベネディクト・カンバーバッチ。「スポットライト 世紀のスクープ」(2015)のレイチェル・マクアダムスや、「それでも夜は明ける」(2013)のキウェテル・イジョフォーなども出演。

1作目なのでハードルが比較的低いのと、予告映像でのユニークさに惹かれた方が多いようで、劇場は満員に近い状態でした。ほかの回、またIMAX3Dが特に人気でしたね。

私はスケジュール関係で2Dで観ましたが、IMAX3Dで観るべきと思います。それほどおもしろい映像が見れるのです。

ニューヨークで高名な外科医であるスティーブン・ストレンジ。広い医学知識に、観察力と天才的な腕前を誇る彼は、ある学術会に向かう途中で交通事故を起こしてしまう。

その結果、手の神経が壊滅的なダメージを受け、もはや医師としての仕事はできなくなってしまった。

絶望し自暴自棄になった彼は、支えてくれていたクリスティーンにつらく当たり、彼女も去ってしまった。

なんとか手を治そうと奔走するストレンジは、ある男の奇跡的な回復を手掛かりに、カマー・タージという場所へ向かう。そこで待ち受けていたのは、彼の知る摂理とかけ離れた魔術の世界だった。

今作は話題の通り、その視覚効果に驚きを持たせ、生き生きと画面が脈打つ楽しさにあふれていました。

文字通り、スクリーンの中を変幻自在に操り、ある意味でトリップ映画と言っても良い感覚です。

ただし、全体に見える必要最低限の整理をしっかりと持たせることで、単に感覚の狂う万華鏡的な映像を垂れ流しているだけにしない工夫がなされています。

何が起き、だれがどこへ行くのか。どういった魔術があり、それは何色なのか。またあのリングがないとこれができないとか。

明確なシーンの目的も常にあるため、すさまじい映像意外空虚であることもないですね。

そして何よりも、このCGの奔流は根底に発想、インスピレーションが丁寧に感じ取れるのです。圧倒的な映像は単に派手でお金をかけたものという事ではなくて、変化変容の楽しさと驚きに満ちていると思いました。

やはり人をあっと言わせるには、情報量の多いCGではなく、アイディアが大切だとつくづく思います。無数の手が重なり合い顔になったり、まさに常識をすてるニューヨークの大都市が自在に変形していく様など、ホントに映像は見どころ満載ですよ。

シューリズムとユーモアのため、たびたびクリスティーンがひょっこり出ているのも良いポイントです。マクアダムスは完全に一般人視点を演じ、かえってシーンごとの緩急やギャップがストレンジら魔術側の独自性を強めていました。

さて、プロットのほうはといいますと、こちらはかなり王道的なものです。まあ「スター・ウォーズ」におけるアナキンのシス堕ちとか、「ハリー・ポッター」シリーズのヴォルデモートといった、ある組織内で悪に落ちたものと、それに葛藤も交えつつ立ち向かうものというお話。

で、キャストはかなりハマっていると思います。

今回イギリス人のカンバーバッチがストレンジにぴったりと合い、またデンマークからのマッツも良く、相変わらず非人間的な何かにしか見えない美しきティルダ・スウィントンも非常に良かった。

なのですが、個人的な残念ポイントはあります。

というか、これは今作に限ったことではなく、MCUシリーズ全体が抱えている問題のようにも思えるのですが。

悪役がカッコよくない、たってない。

いや、ルックは良いのですが、マッツ以外はやはりモブですし。それに力の描写も曖昧でしたね。

彼の脅威性がイマイチ見えてこないのです。確かに人を殺すシーンはありますが、エンシェント・ワンと対峙すればやられてしまうし、ほとんど事故的に戦うことになったストレンジも、マントのおかげがあるとはいえしてやられる始末。本当にカエシリウスは恐ろしいの?

最終的なボスも含めて、やはり魅力的な悪役を出すのにかなり苦戦していると感じてしまいます。

ドクター・ストレンジという新たなヒーロー像ですが、彼の魅力とアイデンティティの確立はしっかりとしている印象でした。

今やキリのないほどに超人やスーパーヒーローが増えたMCUですが、ここにまた着実に差別化されたヒーローを出しています。

それは単に魔術という要素によるものではないですね。ストレンジの精神の部分にあると思います。いつか人は死ぬ、だが救える命は絶対に救いたい。そしてどれだけの悪だろうが、命を奪うことはしたくない、それがスティーブン・ストレンジ。

この指針をはっきりと打ち出すことで、それまでのヒーローとはまた違うスタンスを確立できましたね。不殺の誓いを持つ魔術師です。

数々のキャラがいつつも、アイディアひとつで革新的に新しくみせる。

常識をすてろと言うのですが、その通り。柔軟で発想力に富めば、そしてそれをスマートに伝える視覚効果を持って、ドクター・ストレンジはMCUの大きな一歩になったと言えるでしょう。

おお、すごい!と思いつつ、地に足付けるところはしっかりしていて。やっぱMCUは基本分かりやすさをベースにしていて好きですね。

ってな感じで、MCU新作のレビューでした。ストレンジさんも加わり、スパイディとブラック・パンサー、ソー3に将来はキャプテン・マーベルと、まだまだMCUは続きますね。

シリーズを追ってる人はもちろん、今作はある意味1作目なので初見でもおすすめ。やっぱIMAX3Dがいいのかなぁ。

そんなところで、終わります。では~

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