「フォールガイ」(2024)
作品解説
- 監督:デビッド・リーチ
- 製作:ケリー・マコーミック、デビッド・リーチ、ライアン・ゴズリング、ガイモン・キャサディ
- 製作総指揮:ドリュー・ピアース、ジェフ・シェイビッツ
- 原案:グレン・アルバート・ラーソン
- 脚本:ドリュー・ピアース
- 撮影:ジョナサン・セラ
- 美術:デビッド・ショイネマン
- 衣装:セーラ・エブリン
- 編集:エリザベット・ロナルズドッティル
- 音楽:ドミニク・ルイス
- 出演:ライアン・ゴズリング、エミリー・ブラント、アーロン・テイラー・ジョンソン、ウィンストン・デューク、ハンナ・ワディンガム 他
感想レビュー/考察
ストレートなエンタメ映画
TVドラマシリーズがわからないために、もともとのエッセンスがどれくらい含まれているのか不明です。ただ今作だけ見れば、需要をよくわかっているエンタメ映画ということ。
実は仕事人映画であり、普通は人を選ぶような題材ではあるものの、軽快なアクションやシンプルなストーリー、主演の二人のアンサンブルが見事なロマンスコメディによって誰でも楽しめる作品になっていました。
もっとアクション寄りでめちゃくちゃな話なのかと思ってましたけど、目的がしっかりしているのでブレずに進む作品でした。期待としては普通くらいだったこともあって想像より良くて驚いた作品です。
ベースはロマコメにあると思います。そしてこのコアにある部分、つまり劇中で色々とコルトが戦う最たる理由になるジュディとの関係が良い。
ライアン×エミリーにケミストリーがある
ライアン・ゴズリングとエミリー・ブラントって相性がいいのですね。あまりイメージがなかったので単純に驚きでした。
ライアンはこれまでに「ドライヴ」や「ブレードランナー2049」などでは寡黙でクールな(ブレランはまさにですが)ロボットのような役から、「ナイス・ガイズ!」や「ラ・ラ・ランド」でカッコいいけどちょっとダメなヤツまで演じています。
今回は後者でありそこに「グレイマン」で見せたようなアクション性を足したようなキャラですね。
エミリー・ブラントはこれまた幅の広い俳優なんですが、今作ではとにかく子どもらしさ?子供っぽさが光っていました。彼女が童顔ってわけではないです。ただ、コルトへの当たり方とか、恋愛模様がすごくいい意味で大人じゃない。
序盤のコルトの火だるまスタントシーン。完全な当てつけで何度もコルトを吹っ飛ばす。
しかも、作品に二人の関係がシンクロしているので、女をほったらかして消えた男の心理について、脚本のブラッシュアップとキャラクター理解のためと言ってめちゃくちゃコルトを詰めるんですよね。笑いました。
そこでなんかちょっとふてくされていて、むすっとしているエミリー・ブラントが子どもっぽい可愛さがあるのです。
その後のコルトとのやり取りでも、ほんとは嬉しいのに強がって突っぱねてたり。少女漫画みたいな。すごく分かりやすいロマコメなんですよね。
ロマンスを中心にして、コルトがなんとか事件を乗り越えて再びジュディの心をゲットするのがメイン。
実際のスタント出身の監督だからこそ描けるスタントマンアクション
そこに付随しているのが、快活なアクションの連続です。さすがスタントマン出身のリーチ監督ならではのリアルなアクションが見どころ。
格闘にフリーフォール、車にひかれたりものにぶら下がったり、ボートに大ジャンプなど、アクション映画のアイコンみたいなものが全部出てきますね。
アクションの面ではCGを極力使わないで、ライアンが自分でスタントをこなしているシーンもかなり多い。
予告でいろいろと見えてしまっている部分もあるにしても、やはり生身での挑戦には緊迫感や重量とか重力がしっかりと感じられる。
こわばりが演技ではなく、そこで実際に吹っ飛ばされているからこそ出るんです。
映画に恋して命をかける者たちへ
もちろん、スタントマンを演じているライアンのスタントダブルの方たちもいます。エンディングでしっかりと紹介されているのもやはりリスペクトがあって良いですね。4名が参加しているようです。
この作品は彼らも含めてすべての映画の裏方に対するラブレターでもあります。
「フォールガイ」は落ちる役目の人、身代わりの意味でつかわれる言葉で、まあスタントマンを指しています。
一方でここには命がけでフォール=落ちる。に対してスタントだけではなく、命をかけるほどの恋に落ちるという意味も含めていると、監督のデヴィッド・リーチがインタビューで答えています。
コルトがジュディを思うからこそ、危険な中に身を投じていく。
そしてきっと、命をかけても良い恋の相手は、映画そのものでもあると思うのです。
映画を作るということ、それ自体にスタントマンもカメラマンも爆薬班も小道具などのプロップ、舞台装置の設計に美術、衣装などみんなが命をかけて全身投げ出している。
映画製作の主人公たち
そのエネルギーが映画の撮影現場で渦巻いていて、それにフォーカスを当てたかった。それに愛を叫びたかった。
それが監督の目指したものだと思います。伝わってきますよ。
主演俳優のシーンはほとんどないし、その他の俳優のシーンもない。
今作でカメラが追っているのは、コルトというスタントマン、カメラの後ろのジュディ、撮影のためにあらゆる準備をしている裏方のみんななのですから。
普段はヒーローとして出てくる俳優を立てている彼らが、今作ではみんなで協力して悪者を追い詰めやっつける。
映画の主役って作ってる皆なんですよ。
映画がほんとに好きなんだというのは、とめどない映画エンタの数々にもでていますが、映画製作の仕事をしているわけだから業界ネタが多いのも自然と思えます。
すごいなと思うのは、こういう裏方仕事人のフォーカスは外さないけど、エンタメになっているところ。
「素晴らしき映画音楽」とか「ようこそ 映画音響の世界へ」、また「スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち」などドキュメンタリー映画で、映画の制作側の人たちを追いかける作品は結構あります。
でも、ポップな娯楽映画として彼らを見せていくのは難しい。
それを乗り越えて完成させてる点が、何よりデヴィッド・リーチ監督の今作の偉業だと思いました。
大きなスクリーンで最大効果を生むように設計されている作品なので、ぜひ劇場で楽しんでください。
あと、劇中で製作されているという設定の「メタルストーム」。正直観たい。あの「デューン砂の惑星」のリップオフみたいなSFおもしろそうですよ。
今回の感想はここまで。ではまた。
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