2022年上半期映画ランキングベスト10
6月も終盤、2022年も半分が終わったということでここで上半期のベスト10作品のまとめ発表となります。
今年に入ってからはなんとなく洋画市場に関してはコロナの影響を感じなくなった気がします。
公開延期や中止などは少なくともなかったような。
海外の興行が通常営業に戻ったこともありますが、大作映画からここまでの取りこぼし系でしたアカデミー賞関連に昨年のカンヌだったりと2019年ころの流れに戻った気がします。
公開が待ち望まれた作品がやっと出てきて、配信によらない劇場公開で映画の力を再確認することになったり。
私個人の上半期目標は、月間劇場鑑賞10本だったのですが、結果としては53本と達成できず。もっと意識的に行かないとなぁ。
配信の鑑賞も70くらいとあまり伸びません。
前置きが長くなりました、ベスト10は下記の通り。
上半期ベスト10
- トップガン マーヴェリック
- パリ13区
- TITANE/チタン
- ニトラム/NITRAM
- ライダーズ・オブ・ジャスティス
- ベルファスト
- FLEE/フリー
- アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド
- 彼女のたちの革命前夜
- ティル・デス
こんな感じになりました。
ちょっとそれぞれを紹介します。
第1位「トップガン マーヴェリック」
監督:ジョセフ・コシンスキー
トップガン1作目は全然ピンとこなかったのですが、この続編にはシリーズと継承と、トム・クルーズという俳優、映画人、さらには劇場で映画を見るという文化までもが詰め込まれていました。
映画館で映画を観るのが好きな理由。それを思い起こさせる映画って年に1本あるかないか。今作はまさにそれです。
なにより、映画という文化を背負って肉体的にも限界まで挑戦し観客に素敵な2時間を過ごしてもらうことにここまで熱意を傾けるトム・クルーズと撮影スタッフ、監督、キャストすべてのクルーに心を打たれます。
いろいろと良い作品はあったのですが、やはり一番に推したい映画でした。
第2位「パリ13区」
監督:ジャック・オーディアール
2番手はかなり悩みましたが、ジャック・オーディアール監督からの愛についての現代劇。
繋がりやすくて繋がりにくい、キスもセックスもゴールじゃなくて、人と同じく愛の在り方も多様で。
モノクロの優しさに包みながらもすべての愛のカタチを肯定してしまう。そこには批判も判断もなくて本当に素晴らしかった。
第3位「TITANE/チタン」
監督:ジュリア・デュクルノー
さて3番目はジュリア・デュクルノー監督の怪物映画。
今作もひとつ、愛の在り方をとんでもない次元までぶっ飛ばして肯定し掲げているところが輝かしい。
ただ、以前年間ベストにもいれた「RAW少女のめざめ」と同様に、この監督の作品は観ている私を変容させる。
不可逆的なメタモルフォーゼを強制するという強烈さ、こういう映画には人生通して出会い続けていきたいです。
連続殺人鬼の女が車とセックスして妊娠し、男になって消防士になって父親を得て出産するという狂ったストーリー。それでも最後は美しさに涙が出る傑作です。
第4位「ニトラム/NITRAM」
監督:ジャスティン・カーゼル
ジャスティン・カーゼル監督の送る最大の闇映画。
多分今年一番居心地が悪く恐ろしく歪んでいて不快で、最高でした。
もちろん主演のケイレブ・ランドリー・ジョーンズが本当にすさまじい存在感であることもありますが、この心を乱す作品は監督の作る世界によるところが大きい。
なぜ現実の残酷な事件を映画で見せるのか、そこに本当に完璧なバランスで答えて見せています。ここまで完成された銃乱射事件の映画が今後出てくるのかというのもわからない。
素晴らしい映画。
第5位「ライダーズ・オブ・ジャスティス」
監督:
デンマークのアンダース・トーマス・イェンセン監督の作品。
どんな作品かと聞かれると、復讐の映画と言えますが、しかしここまでいろいろな方向にトーンも感情も揺さぶっていく楽しさはあまりない。
それでもなお、集約していくのは理不尽な暴力、死に対する癒し。
人物のそれぞれの説明をすこしの描写で深く描きこんでいくその繊細な手腕にも感服してしまいますし、ジャンルミックスでも最後は抱きしめていけるのも素晴らしかったです。
第6位「ベルファスト」
監督:ケネス・ブラナー
6位にはケネス・ブラナー監督の超個人的なのになぜかとても普遍的で自分の歴史になってしまう半自伝映画。
モノクロの中で大人の映画ながら視点は子どもで。その時代に生きて自分を愛してくれた人、故郷を想う愛しい映画。
自分は日本生まれですが、なぜかベルファストに当時生きていたような気になります。思い出すと流れ出すEverlasting Love。父さんも母さんもいて、愛し合っていた。じいちゃんとばあちゃんがいた。
彼らとお別れして、でもずっと自分の大事な故郷だから。ベルファストは私の故郷にもなり一生忘れない帰る場所。
第7位「FLEE/フリー」
監督:ヨナス・ポヘール・ラスムセン
アニメーション、というかドキュメンタリー。
かけ合わせられたこのジャンルというか映像手法というか。そこでまさにこのやり方だからこそできることを提示して見せた作品。
アクセスが容易なアニメでありつつも、アニメだからこその悪夢的な描写もあり。
難民の物語を通して過去を認める一人の男性を描きながら、そして彼に信頼されうる人間であれるかの鋭い視線を向けてきた作品。
アニメーションだからこその優しさも厳しさも炸裂し、親密でありながらこちらを見つめ続ける素晴らしい作品でした。
第8位「アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド」
監督:マリア・シュラーダー
ユーモア、映画全体の色彩も温度も全てが自分にはぴったり合った作品です。
異質さを体現しきって見せたダン・スティーヴンスの見事さももちろん、壮大な話に思えても純粋に人間に対しての洞察をくれるシンプルさが好きです。
不完全であるという人間を認めて、だからこそ完全な存在よりもずっとずっと幸せだと明言して見せる気持ちよさ。
思い返せばふと笑みを浮かべながら、トムとの出会いに感謝してしまう、そんな映画体験になりました。
第9位「彼女たちの革命前夜」
監督:フィリッパ・ロウソープ
上半期も本当に終盤に観た作品ですが、ジェシー・バックリーという個人的加点要素は置いておいたとしても、すごく印象に残った作品です。
アメリカでのデモのこともありますが、知るべき歴史と女性、そして人種差別との戦いを、こんな風にちょっとおかしくてユーモアある軽いタッチで描けるものなのだと感心します。
取りこぼしのない幅の広さも、そこに出てくる女性を誰一人として批判せず攻撃しない姿勢も好き。
内側と外側からなんとか家父長制を叩き潰そうという勇気ある女性たちを記憶にとどめ、その切り開いた未来を確実にするために、自分も立ち上がりたくなる。
そのエネルギッシュさが宿った作品でベストに入れたいと思いました。
第10位「ティル・デス」
監督:S・K・デール
さてラストは一番悩みました。
他にもいろいろと良い映画はあったのですが、最終的にはランキングに入れたいという一心でこちら、S・K・デール監督のデビュー作でありミーガン・フォックス主演のスリラーです。
ジャンル映画ですが、その制限された舞台設定とか事態を根底にある男性による支配とシンクロさせるアイディアがまず好きでした。
アイディア勝負ではなく実行も丁寧でしたし、しっかりと設計していて構築も巧い。
小粒で目立っていなかった印象もあるので、引っ張り上げてあげたいというのもあってランクインです。
ということでランキングのご紹介は以上です。
個人的に迷ったその他の良作は「355」「ガンパウダー・ミルクシェイク」があります。
これらは似たような感じで、女性たちのアクションとして結構好きなんですが作品自体の出来は今一歩。
でも、どっちも続編が見たい、彼女たちがもっと観たいと思わせてくれるので好きではあるんですよね。
あとはギリシャからの「林檎とポラロイド」とか。
バットマン映画としては探偵ものになりさらに最後は光の象徴になるという素晴らしさをみせた「ザ・バットマン」も良い。
メロドラマとはいえその完成度の高さで涙腺をぶっ壊してきた「ブルー・バイユー」も素敵な映画でした。
ジュード・ロウ×キャリー・クーンで結婚生活をしんどすぎる形で描く「不都合な理想の夫婦」もまたいい味のある作品。
あげたらキリがないです。
配信限定の映画でもかなりいい作品がありますしね。
さて、この2022年の後半、しょっぱなから「エルヴィス」「ブラック・フォン」「バズ・ライトイヤー」「リコリス・ピザ」「私は最悪」・・・と飛ばしすぎな終末が来ますね。
雷神の4作目とかも控えてますし、まだまだ盛り上がっていく映画館で、残りの後半も過ごしていきたいです。
皆さんも自分にとって大切な作品に出会えることを願います。このランキングや普段のレビューで、なにか参考になったり、作品に興味をを持ってもらえると嬉しいです。
というところでこの辺でおしまいです。
ではまた。
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